Work:作品紹介

ゴールドバンド文ガラス2012.03.23

ゴールドバンド文ガラス(復元)

ゴールドバンド文ガラス

時代:紀元前1世紀~紀元後1世紀
地域:黒海沿岸、東地中海沿岸、小アジア、イタリア半島、クロアチアなど
モデル:MIHO MUSEUM所蔵品

エピソード:

2003年、岡山市立オリエント美術館において小企画展「ガラス史に学ぶ ’03」にむけて
ガラス作家杉江晶子氏の協力を得て復元を試みたガラス壺。私自身、初めての吹きガラス
以外の復元であった。その後、2004年に日本文化財科学会第21回大会にてポスターセッション
でも紹介した。

解説:

吹きガラスが発明される直前にコア技法で作られたと思われるガラスで、さまざまな色が流水状にうねる文様が特徴。
その名の通り金箔も使われており、豪華なガラス品だったことがうかがわれる。

右側のガラスのオリジナルは自立するように底面が平らにカットされており(後世にカットされた可能性が高い?)、そこから
技法に関する情報を垣間見ることができる貴重な資料である。流水文は実物の方が復元品よりも強くうねっている。

見かけ以上に技術的には単純に思えるが、いまだ納得のいく技法の説明はなされていない。

技法の研究:

コア技法とは粘土などで芯をつくり、その周囲をガラスで覆ってから、完成後に芯を掻き出して器を作る技法である。
写真だけの観察では表面に見えている色ガラス棒を芯と平行に乗せていって全体を覆い、加熱しながらコテで色ガラスが走る方向
に対し垂直に力をかけて模様を捻じ曲げていったと考えられた。

しかし、カットされた底面の観察によって、1つの色についてガラス棒1本を使ったのではなく、1つの色の上に別の色(その上にさらに別の色
を被せたものもある)で覆ったガラスの棒を縦に半分に切ったような(よって中の色が露出する)ガラスを使っていたように見える。
このように1回の作業で1~3色の色を芯の上に乗せていたと思われる。

多色ガラス棒

このような多色のガラス棒を使っていたために、各色は立体的に配置されることになり、例えば濃い青の方が水色のガラスよりも表面にあるように
見えている。

芯を以上のような多色の色ガラス棒で覆って完成とはせず、全体を覆った後は、コテでガラス棒を捻じ曲げていく作業をしている。
加熱して軟らかくなったところをコテで抑え、心棒をゆっくりと回してやれば、コテで抑えられた分が捻じれ文様となっていく。
これを全体的に繰り返すと流水文となるが、ガラスが硬かったり、力いっぱいコテで押さえつけると作業途中で芯が外れることもあり、
慎重に行わなければならない。


コテで模様をつくる

この実験では、古代においても空気で立ち上げた炎(古代版バーナー)があったと仮定してガスバーナーを用いたが、これは部分的に加熱はできるが
全体が加熱できないため、このガラスのように炎からはみ出すサイズの製品には向いていないことが分かった。炎が当たらない部分は
冷めやすいため、失敗のリスクが高まるからである。 実物よりも急な流水文にできなかったのもこれが理由であった。

後に、古代版バーナーの存在を消極的に考えるようになり、トルコの工房のような全体を加熱しながら作る技法を考えるきっかけの1つになったという
意味では貴重な研究であった。


芯に下地ガラスをのせる  多色ガラス棒をのせる   コテで流水文をつくる     底面をカットしたところ

協力:杉江晶子

参考文献:

  • 島田 守 2004 「古代ガラスの技法 」『日本文化財科学会第21回大会研究発表要旨集』pp.134-135 日本文化財科学会
2012.03.23 00:35 | 作品, 復元

コメント(2件)

  1. 海田芙柚悸 > 返信
    謎の技法のゴールドバンドを再現されて、素晴らしいです。
  2. shimada > 返信
    ありがとうございます。とはいえまだ謎が多く、もっと観察しなければならないと思っています。

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