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『ビーズでたどるホモ・サピエンス史』2020.05.12

『ビーズでたどるホモ・サピエンス史』

 

  • 池谷和信
  • 2020
  • 昭和堂
  • 297ページ
  1. 人類とビーズ
  2. 人類最古のビーズ利用とホモ・サピエンス
  3. 新石器時代のストーンビーズ
  4. 縄文時代の装身具
  5. 先史琉球の貝ビーズ文化
  6. 古代日本とユーラシア
  7. インダス文明のカーネリアン・ロード
  8. 弥生・古墳時代の多様なビーズ
  9. 古代エジプトの社会をつなぐビーズ
  10. 中国文明の宗教芸術にみるビーズ
  11. アフリカに渡ったガラスビーズ
  12. アイヌと北方先住民を結ぶガラスビーズ
  13. オセアニアのガラスビーズがきた道
  14. オセアニアの貝ビーズ文化
  15. 東アフリカ牧畜社会の若者文化
  16. 台湾原住民族の文化の多様性
  17. 現代アイヌのタマサイ
  18. タイの若者文化と土製ビーズ
  19. 日本で華開くビーズ文化

vitrum lab.評

天然素材、人工物に限らず穴に紐を通したものをビーズと定義し、ビーズの
用途、伝統、交易、といった観点で古代から現代までの人類の足跡をたどる内容。
目次を見ても明らかなように、時代も地域も広大な範囲を扱い、面白い内容でした。

それぞれの専門分野の研究者によって書かれた内容をまとめたもので、
一章一章がほどよいページ数で読みやすくもありました。

ホモ・サピエンスの足跡をなぜビーズでたどるのかといえば、
ビーズは人類が美という観念をいつから持つようになったかを知ること
ができるからであるという。現代的な都市生活の視点でいえば、ビーズは装身具であり、
身体のみならず、カバンや服などを日用品を飾るために多様されているものと
いうのが第一印象ですが、初期人類の考古学的研究や、現代の民族例からは
威信財や祭祀具としての役割もあることが分かっています。

貝殻や骨・歯の利用から始まり、石、ガラス、昆虫など様々な素材が扱われ、
それらを身に着けることには、視覚的な意味があったという共通の認識が
研究者の間にはありました。特にガラスは、産地が限られ、入手困難な
ラピスラズリなど希少な石を模倣するために作られたと考えられており、
入手困難なものを手に入れることができる=それを入手できる力やルートを掌握している
ことを見せつけることにもなり、権力とつながりやすいという意味では
当時の支配体制や交易ルートを知る上で重要な遺物となっています。

ホモ・サピエンスの足跡をたどる内容にスポットが当てられているため

技術的な内容がほとんど出てこなかったのは個人的にはやや残念ですが、
これはまた別の研究者たちによる記述に期待したい。

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