『実験考古学』
・・・本書には実験考古学を開発してきた多くの人々の業績が収録されており、これら先達の人々のいく人かは研究をなしとげるために多くの苦心を重ねてきました。しかし、そうした人々の努力にもかかわらず、実験考古学は考古学研究のなかにあっては比較的最近さかんになってきた新しい分野といえます。古代の人々は石や木や金属でさまざまな品物を作りだしたのですが、もしそれらの品物をたんに出来上がった製品としてのみながめるのではなく、それらがいかにして作られたのか、という点まで含めて過去の出来事をよみがえらせることができるとすれば、過去の人類の文化の過程をよりいっそう詳しく知ることができるのではないか、ということに私が気づいたのは、1960年代のはじめの頃のことでした・・・
ガラスのことが書かれていようといまいと、そもそも実験考古学とは何か?ということを再確認しようと探したところ、古書として見つけました。今更ですが(笑)。でもこういう風に原点に時々戻ったり、他の実験を知るということは大切なのではないかと思います。ガラスだけでなく他の研究も見て視野を広げないと頭が偏ってしまいそうですし。
実験考古学という分野は最近よく見られるようになってきましたが、体系的に取り扱ったものは意外にもほとんど見かけません。著者が序文の中で「過去に行われた実験の多くが、従来一般に刊行される機会が少ないことに気づいた」と述べたのは1976年。それから30年以上が過ぎた今ですらこのような現状です。よって今でも実験考古学的研究を志すならば大切な本となるに違いありません・・・今となっては入手が困難かもしれませんが・・・・。
この本は翻訳本で、海外の実験考古学的研究について紹介されていますが、1970年代にすでに1つの研究分野として存在していて、今から見ればそれもまだ未熟な学問だったかもしれませんが、実験考古学とは何か?を特に勉強してきたわけでもないので私には新鮮でした。日本においては土器製作や石器製作のような小さな研究はよく見られますが、本書では規模が違います。土塁を築いてそれがどう浸蝕されていくのか、数十年という長いスパンで研究されていたり、家屋を建築し、それを燃やしてどのように燃え、何が残るか、あるいはこれは現代の動物保護の観点からは受け入れられないかもしれませんが、矢じりで動物を実際に射るとか、原始的な船で航海するとか、どれも大がかりですが、「知りたい」という実験者の意気込みが伝わってきます。こうなると個人のレベルじゃ難しいのですけど・・・・。
自分の研究において、復元できたからといって必ずしもそうだったということは断言できず、あくまで可能性の高さを議論できるだけであるということは常日頃気にしてはいますが、本書でもそのようなことが書かれていたり、また、使う道具や設備は当時と同じレベルにして実験を行うべきで、そうでない時はきちんとそれを伝えるべきであると述べていたりと、古いとはいえ方法論としては今でも通用するバイブル的な本だと思います。
実験考古学は専門技術が伴うことも多く、いきなり素人がやっても研究にもならないなんてことはよくあることですが、それでも挑戦し続ける気持ちはものすごく分かる気がします。とにかく知りたいのです。中には「なんじゃそりゃ」という失敗例もあったり、自分がその立場でもそうするだろうなと感じたりすることが多々ありました・・・・・これは私だけでしょうか???。
ここで紹介した本は下から選んでご購入いただけます。この本は・・・絶版かもしれませんが・・・