1960年代からファイアンスの分析が盛んになる。
分析によってナトリウム、銅、ケイ素などの元素が検出されたが、結合状態が
わからないため、詳細は不明とのこと。結合状態を知るにはX線回折分析が有効
だと聞いたことがあるがどうなんだろう?
つくり方は
①原料をまぜる
石英、石灰、アルカリ、着色剤(銅)を混ぜて水を入れて練る。山花氏によると
この水加減が難しいとのこと。入れすぎるとしゃばしゃばになり成形できないが、
適量だとしても粘土のような可塑性がないため意図した形にならないのだという。
②乾燥させる
成形して1週間ほどかけてゆっくりと乾燥させる。
手による成形が難しいため、型を使ったと思われる。
乾燥させるとアルカリ分が蒸発しようと表面に浮き出て白い斑点となる。
これを「白華現象」といい、ここで紹介しているこのつくり方を「白華技法」と
呼ぶ所以である(ファイアンスにはいくつかのつくり方が想定されている)。
この現象が見えたら焼きごろ
ちなみに、このアルカリ成分を削り取ってしまうと焼成後の光沢がでないとのこと。
③焼成
850度(焚火の温度)ほどで8時間かけてじっくりと焼くと、表面がガラス化して光沢のある
ファイアンスになる。焼き物と違い、1回焼くだけで光沢がでて完成する。
製作実験から、可塑性のないペーストをどのようにして成形するかが大きな課題だった。
実験では小麦粉、ハチミツなど様々に試したが黒く焼けたり、焼いてもダレたりとうまくいかなかった。
有機物は分析では検出されないため、つなぎ(バインダー)が何かは分かっていないため、今のところ
水を使っている。
ところが、漆喰として知られる水酸化カルシウムを数%入れると型崩れが起きにくいことが判明。
さらに焼成温度も830度とやや低温でも焼成できた。漆喰はピラミッドの石材同士をつなぐためにも
使われているもので、可能性としてはあり得る。
以上、講演の備忘録であるが、技法については講演の4割ほどしか時間が割かれなかったが
聴講者の関心は技法のことがやはり高く、休憩時間もファイアンスの試作品を取り囲んで
意見交換が絶えなかった。
ファイアンスは既述したように、2世紀にはガラスの登場などにより廃れる技術である。
吹きガラス以前に流行した型を使った鋳造ガラスやモザイクガラスも吹きガラスが登場して
間もない2世頃には廃れるのだが、型を使った手間のかかる技術がファイアンスにせよ、ガラスにせよ
廃れるということが興味深い共通点である。いずれにせよ、青色へのこだわりよりも手間のかかる
技術が問題視されたに違いない。焼き方やバインダーなどまだ解明できていないところがあるので
今後の研究にはまだまだ期待が膨らむ。
ファイアンスについては過去に横浜ユーラシア文化館で展示がありました。
その時のカタログに詳しいです。Amazonでは取り扱いがないもよう。
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