『ジャンヌ』
これ漫画です。ガンダムのキャラクターデザインで有名な安彦良和氏が歴史ものを描いたことに興味を持ちました。500ページを超える大著でしかもオールカラーです。
イギリスとフランスが中世において長い長い戦争(百年戦争)をしていて、フランスが不利な状況だったが、神の声を聞いて駆けつけたジャンヌがこの形勢を逆転させフランスを勝利に導いたとされる奇蹟の物語・・・・・ですが、本書は直接ジャンヌを主人公にはしていません。ジャンヌ死後10年後に、別の少女がジャンヌの足跡をたどりながら、似たような体験をし、そこからジャンヌの生死の意味を垣間見るという物語です。
はじめはコミックの依頼を断ったそうです。その理由についてはあとがきに「僕自身がジャンヌの奇蹟を信じないから」と書いていますが、その後、「人々が戦にあけくれていた暗黒の時代、ジャンヌの存在が奇蹟であるためにはほんの少しの超日常があれば良かったのではないか」という考えに至り、それをジャンヌではない別の主人公を通してジャンヌを見るため、上記のような物語にしたということです。
神の声の解釈についてはたくさんの考えがあるようです。ミラ・ジョヴォビッチ主演の映画「ジャンヌ・ダルク」でも神がジャンヌに示した「徴(しるし)」は、あくまでジャンヌが「神の声」と勝手に解釈しただけであって、ほかにも可能性が考えられるのではないかと問い詰められるシーンがあります。この映画にしろ、本書にしろ、科学的・論理的な考え方が主流のいかにもいま風な視点だなと思いますが、それでもジャンヌは後世にも語り継がれていくのでしょうね。
さて、こういう時代ものではついガラスに目がいきます。例えば、TV番組で古代エジプトのとあるシーンを役者さんを使って再現する場面で、当時まだ発明されていない吹きガラスが普通に置かれていることがたまにあるんです。そういう時はツッコミです。本書でもワインを飲むシーンがありますが、その時のグラスや水差し、そして部屋のランプがちょっと違うかなあと思ってしまったり。職業病ですね。 こんな細かいことは気にせず、安彦ワールドを楽しんで下さい。
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