『古代エジプトの歴史』
私が属している日本ガラス工芸学会でお世話になっている山花氏の本です。実はエジプト関係の歴史書なるものを買ったのはこれが初めてでした。いや、単にお世話になっているからとか、そういうつもりで買ったわけではなく、エジプトの歴史書と分かってはいてもやはり他の人よりはガラスとかファイアンスが出てくるのではないかというかすかな期待と、「本格的入門書」といううたい文句につられてのことです(笑)。エジプトの歴史は複雑で分かりにくいという印象が強かったものですので、入門書から入らないとついていけないだろうと思ってたら、出ました、この本が。
およそ3000年という長いエジプトの歴史でも、本書では後半の1500年分、つまり新王国時代~プトレマイオス朝までを扱っております。ピラミッドで有名なエジプトですが、それが建てられてからずっと後のことです。
徹底的に簡潔にそして歴史順に書かれているので分かりやすかったです。エジプトという土地を上空から眺めて、新王国時代からの流れをずっと眺めているような感覚で、テンポよく歴史が動いていくのを見ている・・・そういう感じでした。どんだけ繁栄しても文明はやっぱり衰退していくのだなと感じずにはいられません。強大な権力を誇ったエジプト王朝も後半以降は権力が及ぶ範囲が狭くなり、王の資質の衰えもあり、地中海世界に興った国々と政略結婚などをして生き延びる方法を探っていきますが、やがてそれらの文化とも融合していき、エジプトよりももっと広い世界に飲み込まれて歴史の中に埋もれていく・・・・エジプトの歴史ですが、まるでこれは人類の歴史そのものではないかと思ってしまいます。山花氏曰く「われわれが今後直面するであろうさまざまな変化にどのように対応すればよいのかを学ぶべきなのかもしれません」がこのあたりのことを指しているように思われます。グローバル化が急速に進む現在、まわりに飲み込まれない国づくりをするのか、協調路線を選ぶのか、日本もいま問われている時ですね。ちょっと話がそれました。
とにかく、エジプトの歴史は専門家しかわからないような複雑で深いものだと思っていましたが、入門書をうたう本書はちょっと引いた目線でエジプトを眺めているので、私にも分かりやすかったです。ガラスについてはかる~く登場するくらいです。ガラスの本ではないので当然ですね!
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この本は大学生の教科書として書いたものです。実は、新王国時代より以降のエジプトの衰退の歴史を書いた日本語の本は他にないのですよ。せっかく学生さんが関心を持ってくれても、日本語の本が無いのでは辛いだろうとおもい、出版社から出してもらいました。
次は新王国より前の時代を書くことになっていますが、それよりも前に、エジプトにあった美術工芸の技法について、ガラスも含めて書いてみたいと思っています。いろいろと調べたいことがあって、何年かかるかわかりませんが、出たらお知らせいたしますね。それまで温かい目で見守ってやってください。よろしくお願いします。
まさか著者からコメントがくるなんて思ってもいませんでした(笑)。ありがとうございます!そうなんです実は初エジプト本です。内容を分かりやすく書くことに徹底されたことが伝わってきて気持ちよく勢いを持って読むことができました。ガラス関連の本も同じく日本語の本が少ないので、なんとかならないものかといつも思っています。訳すべき本はたくさんあると思うんですが。次の本も楽しみにしております!