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本庄・薬師堂東遺跡でガラス小玉鋳型出土 全国初の完形品2013.06.23

ガラス玉を作る鋳型が出土しました。初の完形品ということです。古代のガラス玉の製作技法を知る貴重な発見です。このような鋳型の出土例は国内でも数例あり「たこやき式鋳型」などと呼ばれています。

記事: http://www.saitama-np.co.jp/news05/29/03.html

そのイメージと関連してか、この鋳型に液体のガラスが流し込まれて、玉を作ると言われることがあり、そして実際、この発見を報じた別の記事でそのように解説されているものもありますが、液体のガラスが流し込まれたことはほとんど考えられないでしょう。鉄を鋳込むのとは違い、ガラスは常温下ではあっというまに固化していきます。ましてや、このような小さな型に1つ1つ丁寧に流し込むことなどほとんど不可能と思われます。またガラスをさらさらの液状に保つには古代においては非常に高度な窯業技術が必要です。

では、どのようにしてこの鋳型でガラス玉が作られたか?いくつかの方法が考えらます。

  1. 小さな穴にガラスを細かく砕いた破片または粉を充填して、型ごと窯に入れて加熱する。

    紐を通す穴をあけるには、各穴の中心に細い芯棒を挿しておきます。また、ガラスを液状に保っておくほどの温度は必要なく、窯の構造も単純で済みます。芯は焼けてしまうため古代に何が使われていたのかは不明ですが、このような鋳型は現在のアフリカでガラスビーズを作る時に使われるものと驚くほど同じで、その方法も古代とほぼ同じだったのではないかと考えれます。アフリカでは芯棒にキャッサバの葉柄が使われています。それについては『謎を秘めた古代ビーズ再現』に詳しく書かれています。

  2. あらかじめ作っておいたガラス管を穴に入れて再熔解する。

    この方法は飛鳥池遺跡から発見されたガラスや坩堝、古代の文献をもとに元奈良教育大学教授の脇田先生が実験を行っています。二つの棒の先にそれぞれガラスを巻き取り、それぞれを漏斗状に成形して合体させ引き延ばすと空洞のガラス管ができます。これを短く切ったものを穴に入れていき、カルカヤ草を巻いた鉄心を鋳型に挿して型ごと加熱するという方法。手間はかかりますが、遺物やガラスの気泡、文献など多方向から研究した上での実験で興味深い。

ガラスのみならず、その製作に使われた設備や道具の出土例は非常に少なく、それゆえ研究の機会も少ないですが、液状のガラスを流し込むというイメージは今では消えつつあります。ガラス成分の分析も進んできており、それも合わせて総合的な研究が出てくるような気がします。

2013.06.23 01:13 | ブログ

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