さて、私一人だけ暗くて湿気の高い地下墓の調査担当になった。
いまでこそ、この地下墓は階段を下りて入り口を入ると天井を見上げるようになっていますが、
土砂やら石材が倒れてごろごろしていた初期は天井に手が届くどころか頭もぶつけてしまうくらい
だった。
石材を運び出す前に与えられた任務は環境調査。実は天井には顔料で何かが描かれており、
壁画は温室度や日光、二酸化炭素濃度などさまざまな影響を受ける。本格的な調査に入る前に
この石室内の環境の現状を把握するのだ。
発掘調査中は定期的に一定時間で環境調査を行うのだが、1週間ほど朝の5時から夕方18時くらいまで
現場につきっきりで調査を行うことになった。
↓ 早朝5時頃の現場
4時半頃にナーデルが迎えに来て、一緒に現場へ。それから扉の鍵を開けて
室内へ・・・・
いやいや、
観測地点暗くて見えへんし・・・・(笑)
I教授より忠告があったのを思い出した。
「毒蛇がまぎれこむことがあるから、むやみに隙間に手をいれないように」
・・・・・・・・・・・・・・・・
いやいや、
見えへんし(笑)
早朝はそんなわけで効率が悪い。
昼食は毎日現場までピザをデリバリーしてもらった。ナーデルの弟サーメルがピザハットで働いていたのだ。
一人で環境調査を行うと30分くらいかかる。あとの30分はテントの下でバナナ畑を眺めながら待機。こうして1時間ごとの環境が
記録されていく。
これは後々、保存班の恒例作業となるが、同伴することになるナーデルは毎回嫌がった(笑)。おかげさまで、ナーデルとは
嫌がおうにも英語で会話せざるを得ず、ネイティブではないが、レバノンでの生活では苦労しないくらいに後々英会話
が上達したきっかけになった。英語の勉強が大嫌いな私にとって、もっとも効率のいい英会話学校はこのレバノンだった。
↑ 地下墓入口にテントを張って環境調査をする。岩肌からの照り返しが暑い