Blog:羅馬は一日にして成らず -2nd edition-

ガラスの道具2013.12.21

ガラスの道具ウンチク。ガラス吹きはすっかりおなじみですが・・・古代についてはほとんど
知られていないのでは・・・・

↑ 吹きガラスの基本道具。

  • 一番左の木の板(写真では2枚ある)はパドル・・・底を平らにしたり、大きな作品を作るとガラスからの
    熱が強烈で熱くて成形しにくいことがあるので、アシスタントガこれでカバーしてくれる。
    古代ではこれくらいあってもおかしくないとは思うが、コレといった考古学的証拠があるわけではない。
  • パドルのとなりにあるのはハサミ(写真では3つある)・・・ガラスを切る、口切りなどに使われる。古代のハサミは
    糸切りバサミのようなU字形のものが知られているが(Stern 2001, p19,21)、ガラス工芸に使われていたかどうかは不明。
    写真のハサミのうち、一番左のものはさらに特殊なもので、ダイヤモンド・シアーズという。刃がまっすぐではなく、ジグザグ
    になっていて、刃が交差する時に1点で切れるようになっている。普通のハサミで切ると断面がつぶれてしまうのが不都合な
    時に用いる。
  • 右から2番目にあるU字の道具がピンサー・・・ガラスをつまんだり、道具をこれでつかんだりするために使う。古代から使われて
    いたと考えられる道具。
  • 一番右がジャック・・・バネのきいた道具で、握り具合を調節してガラスにくびれを入れたり、口を広げたりと最もよく使う道具の一つ。
    今では先がとがったもの、丸いもの、平らなものなどが使われているが、古代では平らで細長いものが使われていたとされる(Stern 2001, p20)。
  • バケツに乗せている新聞紙は紙リン・・・日本特有の道具。新聞紙を濡らしただけのものだが、これを掌に乗せて熱いガラスの形を変えていく。
    他に木リン金リンというものがある。木リンは木のブロックに丸い窪みをいれたもので、熱いガラスをこの中に入れて転がすことで、ガラスが
    その形や大きさに成形されるが、形や大きさに応じたものを準備しなければならない。金リンはボウル状のもので、この中の湾曲した部分を
    利用してガラス種の形を整える。いずれもガラスの形を整えるためによく使われるが、古代においては使われていないとされる。古代ではガラスの
    形を整えるにはマーバーという平らな台の上を転がしていたと考えられる。現代でもこの方法は使われている。
  • ベンチ・・・両端からまっすぐ前に平行な腕が伸びている。この上を竿を転がすと自然と平行が保たれるようになっているため、非常に便利な
    道具。軟らかいガラスは回転を止めると垂れて歪んでしまうため、常に回転させて作業することになるが、ベンチがあると歪ませるリスクを減らす
    事ができる。これは16世紀半ば頃の発明とされており(Newtonほか 1989, p.79)、古代には存在していなかった。それでは古代ではどのようにして竿を回転させて成形していたのか?それは腿の上などを使っていたのではないかと考えられる。今でもベンチを使わない工房があり、そこの職人は腿の上で竿を転がし成形している。

以上、吹きガラス基本道具うんちくでした。

参考文献

Stern, E. M. 2001 Roman, Byzantine and Medieval Glass, 10BCE-700 CE Ernest Wolf Collection.

Newton, R. G., Davison, S. 1989 Conservation of Glass

 

2013.12.21 00:00 | ブログ

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