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『昨日までの世界』下 文明の源流と人類の未来 – Vitrum Lab.

Books:本の紹介

『昨日までの世界』下 文明の源流と人類の未来2014.07.22

『昨日までの世界』上 文明の源流と人類の未来

 

  • ジャレド・ダイアモンド 著 倉骨 彰 訳
  • 2013
  • 390
  • 日本経済新聞出版社

4. 危険とそれに対する反応
有益な妄想
ライオンその他の危険
5. 宗教、言語、健康
デンキウナギが教える宗教の発展
多くの言語を話す
塩、砂糖、脂肪、怠惰

vitrum lab.評

上巻からの続編。現代国家社会にみるさまざまな問題の解決の糸口を伝統的社会から見出そうとする切り口が面白い本です。その問題の解決となるヒントを伝統的社会のどこから引き出してくるのだろう?と気になりながら読み進めることができます。

人類が誕生して600万年。しかし今のようなくらしを手に入れるきっかけとなった農耕定住社会がはじまったのはたかだか1万年ちょっと前。この長い人類史の中でみるとつい最近まで人類はずっと伝統的な暮らし方をしてきたのであって、599万年間は今とは全く違う世界で暮らしていました。人類史でみると伝統的社会は「昨日までの世界」ということになります。

急激に社会を発展させてきた人類ですが、それでも多くの問題を抱えたままなのが現状。目次にあるような問題を解決する方法を確立できないで今日に至っています。今でも伝統的な生活を営む民族もいますが、彼らの社会を研究し、実際に生活を共にすることで著者は時代に取り残されそうになっているかに見える彼らからも学ぶべきことがあると気付きます。

例えば言語。急速に言語が消滅していっているといいますが、伝統的な生活様式の社会ほど多くの言語を話す傾向にあるといいます。一方、ヨーロッパのいくつかの国では消えつつある言語を保護する政策をとらねば消えそうな言語もあります。この問題にどう取り組むべきか?こういう主張があります。グローバルな時代、お互いにコミュニケーションをとるには共通言語が必要なのではないか?

ところが、言語を統一したところで、次は宗教が違う、習慣が違う、と違いを述べたて、結局は互いに理解しようとしないのが共通言語主張者なのだと著者はいい、決して言語の相違が人々を対立させている原因ではないと指摘。ある高校では7つの言語が話されているけれども、自分の出自を恥じる生徒も、他部族の人間を恐れる生徒もいなかったと報告しています。むしろ言語は人間の心のもっとも複雑な産物であり、なくそうとするよりも別の言語の知識を学ぶことで人生が豊かになるのだと説きます。

著者は何も昔がよかったのだから、今の生活を捨てて昔に戻ろうと言っているのではありません。むしろ現代社会は伝統的社会よりも大きな利点があったからこそ発展してきたのだという考えです。ただここに至るまでの様々な問題を伝統的社会から学び取ることができる。そして次につなげることができると書かれています。その根拠を多くの事例を持ちだしながら論ずるところがこの本の醍醐味。内容も分かりやすく、これは訳者の功績と思うのですが、うまいこと訳しているなと感心させられます。学問的には民族学や考古学、生物学、それから病理学など学際的な内容で大作なんですが、それを感じさせないほど読みやすい内容でした。

 

2014.07.22 20:39 | その他, , 考古学

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