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第11回アジア考古学四学会合同講演会「アジアの煌めき」③-22018.01.31

 古墳時代前期のガラス小玉の流通

  • 前期前半
    弥生時代からのカリガラス(淡青色)が主流となる。関東地方・・・前代から引き続き、カリガラス(淡青色)と大型の紺色ガラス玉
  • 前期後半
    ソーダガラス(淡青色不透明)の高アルミナタイプが加わる。流通の中心が畿内に移り、周辺地域へ拡散する構造へ変化。
    関東地方・・・ソーダガラスの高アルミナタイプが加わる。地域性がなく、倭王権の副葬品に関連するものと考えられる?

古墳時代におけるガラス小玉の生産

<鋳型の出土状況>

小玉を作る技法はいくつかあるが、ここでは主に鋳型を使った技法について述べる。鋳型の出土状況は以下のような傾向がある。

  • 前期
    北部九州と関東地方で鋳型が確認されている。北部九州は韓国出土のものと胎土、軸孔の特徴が類似
    関東地方の例は在地の土器の胎土と類似。軸孔は未貫通で焼成があまい。

 

  • 中期後半~終末期
    大阪、奈良が分布の中心

 

  • 7世紀
    中葉の埼玉県・薬師堂東遺跡で100点を超える鋳型が出土するなど東日本の出土例が増加。薬師堂は東北地方を視野に入れた生産か?後葉から末葉には奈良県・飛鳥池遺跡など政治の中枢部で生産されたことが確認されている。

<鋳型の性質>

鋳型は古墳時代後期以降の方が焼成が良い傾向にある。実験では未焼成に比べ、焼成済みの鋳型の方が製品を取り出しやすく、繰り返し使うことができた。

鋳型はくぼみの断面が方形から半球形へ変化し、軸孔は未貫通だったものが貫通するようになる。軸の素材や焼成遺構の構造変化か?

<鋳型玉の比率>

  • 弥生時代~古墳時代・・・引き伸ばし法中心
  • 古墳時代前期・・・関東地方で鋳型玉数例
  • 古墳時代後期後半・・・関東地方以外でも紺色の鋳型玉が増加
  • 古墳時代終末期・・・鉛ガラス(緑色)の比率が増加

 

以上、関東を中心にガラス玉や鋳型の出土状況から流行や流通を考察した内容でした。
特に南関東では紺色のガラス玉が大型化するという状況は興味深い。これが鋳型でつくったもの
であるなら、引き伸ばし法から鋳型法への切り替わりがなぜ起こったのか、もしかしたら
リサイクルガラスとしての材料の輸入ルートが確保できたのかなどさらに多くの問題が生じてきます。
また、そもそもなぜ紺色のガラスだけが大型化したのか?(他の色のガラスでもいいわけで)なども
知りたいと思います。今後、関東でも出土例が増えていくことが期待されます。

2018.01.31 13:09 | ブログ, 研究会

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