周囲の工房が廃業していく中、ちょっと前までガラス玉を作っていたおじさんが
ガードマンをしているところを見た松田さんは、いたたまれなくなったといいます。
松田さんのお父さんが営んでいた工房にも不況の嵐は吹き込みましたが、幸いにもまだ仕事が
あった方だということでした。それはお父さんの腕と人柄がよかったからだと松田さんはいいます。
不況で仕事が減ってきたため、デパートなどで展示販売するようになり、これを機に工房の名前を
親子で考えていた時のこと。二人で飲みに行った帰り道にとても美しい月を見たそうです。お父さんは、
続けて「山も好きだなあ」と口にしました。山月工房の誕生の瞬間でした。そしてつくっていたとんぼ玉に
「和泉蜻蛉玉」と名付けました。地元のイベントなどでは、歴史保存活動として実演にも力を入れ、
これが後に伝統工芸につながっていくことになります。平成14年に和泉蜻蛉玉は、大阪府知事指定伝統工芸品
指定を受けました(製造産地は山月工房)。順調に思われた山月工房ですが、大きな出来事が起こります。
ガラス玉つくりには欠かせない材料であるガラス棒の大幅な値上げ。その値段ではとてもやっていけないと
考えたお父さんは、その業者からの仕入れを断念、新たにガラス棒を探すため、廃業した工房など考えうる
たくさんの場所を探したそうです。しばらくて、ガラス棒を大切に保管していた人と巡り合い、譲り受けることが
できたとのこと。このガラス棒が後に、山月工房の新たな挑戦に大きく寄与することになります。
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