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『古代への情熱』シュリーマン自伝2011.07.30

『古代への情熱』シュリーマン自伝』

『古代への情熱』シュリーマン自伝

  • シュリーマン著 村田数之亮 訳
  • 1954
  • 201ページ
  • 岩波文庫
  1. 少年時代と商人時代(1822-66)
  2. 最初のイタカ、ペロポネソス、トロヤ旅行(1868-69)
  3. トロヤ(1871-73)
  4. ミケネ(1874-78)
  5. トロヤ、第2回と第3回発掘(1878-83)
  6. ティリンス(1884-85)
  7. 晩年(1885-90)
  8. シュリーマン略年譜

vitrum lab.評

トルコ旅行を計画したときにトロイは行っておくべきだろうと考えていましたが、ここがなかなか行きにくい場所でして、他との兼ね合いもあって今回は断念しました。ということでせめてトロイを伝説から史実にせしめたシュリーマンの本でも読もうかと思ったのでした。

幼き頃に読んだ本でトロイ戦争に興味を持ち、これは伝説ではなく実際にあった出来事なのだと信じて疑わず、商売で成功を収めてから自ら発掘しそれを証明したということで有名なシュリーマンの自伝です。自伝と言っても本書は彼の死後、妻のソフィアとシュリーマンと親交のあった博士が協力してシュリーマンの日記を参考に仕上げたものであり、実際には目次の1の部分だけが自伝に当たる個所です。そういういきさつで書かれていることや、当時発掘というものがどこか宝探し的なものの要素が強く、どこまで学術的なレベルに達していたのか分からないため、シュリーマンの人間性に対する評価が多分に含まれているものの、学術的な内容というよりは発掘の経過を説明するような感じの内容です。現在、彼に対する評価は考古学的にみると、どちらかというとあまり高くはなく、むしろ遺跡を壊したために今となっては再確認が難しいと非難されていることもあります。しかし、商人時代を通じて非常に忙しい中でも語学を猛烈に勉強し、何カ国語も読み書きができるようになったというように、かなりの努力家でもあったようで、今でこそ彼に対する様々な批評や疑惑があるにせよ、基本的には苦労しながらでも夢を実現させたという人物として広く知られていることには変わりありません。

本書は1950年代の本であり、しかも翻訳のしかたが今の感覚からしてどうもしっくりこないような書き方をしていて難解なところもありますが、まずはこれを一読して、シュリーマンの素晴らしい人間性をかみしめ、それから新しく書かれた彼に対する別の見方の本を読んでもおもしろいかもしれません。

vitrum labook

ここで紹介した本は以下で取り扱っております。

2011.07.30 22:12 | , 考古学

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