Blog:羅馬は一日にして成らず -2nd edition-

「和ガラスの神髄」展2011.10.09

神戸市立博物館で開催されている「和ガラスの神髄」展に行ってきました。

今回の展示品について、カタログも参考にしながら簡単に説明しますと、神戸松蔭女子学院大学名誉教授・棚橋淳二氏のコレクション“びいどろ史料庫”
のガラスが神戸市立博物館へ寄贈されたことを受けて、その名品の数々を速報という形で展示したものです。
棚橋氏は特に日本のガラスについて多くの論文を書かれており、日本のガラスを研究するのであれば、必ず目にすることになります。
歴史的な側面だけでなく、技法、文献史料、それから研究法など広い視野をもってガラスの研究に取り組まれており、日本ガラス研究に
多大な影響を与えている方で、例えば、切子ガラスのカット模様を詳細に観察することによって手彫りなのかグラインダーによるカットなのか
判断できることを示したり、ガラスの製作時期の判断基準として比重を測定する方法を提案されたりなど、枚挙に暇がありません。
私からすれば当然、雲の上の存在であります。

棚橋氏が長年かけて集めてきたガラスコレクションは、個人コレクションではありますが、鋭い鑑識眼をもって集められているので美術館に陳列できるような
名品も 多いと聞きます。もちろん単に比較研究資料のために入手されたものもあり、展示価値からすればピンからキリまであるかもしれませ
んが、棚橋氏からすればどれもが保存されるべきもので、全て価値のあるものだと思います。 史料の数は数千点にも及び、現在も整理作業が続いている
とのことで、そんなわけで“速報展”という形で企画されています。ですので、これまで何度も当館に足を運んだことのある私は、展示品が少ないように感じま
したが、その理由も納得です。今後あらためて本格的な展示があると期待されます。

さて、個人的な視点ですが、日本の吹きガラスは 17世紀頃、西洋から伝わったとされていますが、独自の技術ではないのになぜポンテを使った跡がないのかなど、技法的に不思議なところが多々あります。展示品の多くにポンテ跡が見当たりませんでした。技術を伝えた西洋人はポンテを教えなかったのでしょうか?? ポンテを使わず口を成形する方法についてはローマ・ガラスでも当てはまる問題で興味深いのですが、解説では、全体を冷ましてから、口だけをあぶって広げたとあります。この説明だけを見ると、冷めたガラスを部分的に加熱すると割れてしまうという印象があるので、 まだまだ追求することがありそうです。

膨大に増えた当館のガラス史料から、どのような答え、そしてまた新たな問題が出てくるのか・・・資料整理が進行中ということは研究も進行中なのです。

2011.10.09 23:08 | ブログ, 博物館へ行こう

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