探検家や民族誌家による未開人の観察記録が、もはや消滅してしまった先史時代の研究に役立てられ、やがて研究者自らが
道具を作り、それを使って技法や機能を明らかにしていくようになり、もっと突っ込んで労働時間や使用頻度、道具の能力までも
明らかにしようと試みられています。それを実験考古学といいますが、私もこのような研究方法を採用しています。
吹きガラスの工程はおそらく古代も現代も大方は同じだと考えられますが、考古学的な証拠からすると、2つの点で明らかに異なる
ことが分かっています。1つは古代においてはアシスタントを使わず、全て一人で作ったと思われること、もう1つは、吹き竿を水平に
保ちながら作業するのに便利な設備「ベンチ」がなかったこと。
このVitrum Lab.のロゴマークは実は、その考古学的物証からとったものなのです。窯を挟んで2人の職人がそれぞれ吹いているという
デザイン。
しかし、身近なガラス工房には普通にアシスタントがいますし、ベンチも設置されています。製作技法を研究するに当たり、当時はこれらが
なかったということを前提しなければならないのですが、 どうしてもそれをイメージだけで終わらせず、実際に見てみたいと海外へ足を
伸ばしたのが始まりです。
前回紹介したシリアは、運よくこれら2つを使わずに吹く工房だったのでした―