本書は水中考古学に携わり、水中での調査を容易にするためのハイテク技術などを考案し、この分野の発展に貢献してきたゴディオ氏の発掘秘話を中心にまとめたもので、専門書ではありません。そのため、非常に読みやすいものとなっています。学術書的なものを望んでいれば物足りないかもしれませんが、水中考古学の一端を垣間見ることはできます。オールカラーの写真は美しかったです。よく、博物館などで引き上げられた遺物そのものの写真はよく見ますが、海底に散らばる、取り上げられる前の遺物や、それと一緒に写っている魚の群れはなかなか見ることがないので、それは学術書でないこの本ならではのものと思います。有人探査機に乗って調査している写真なぞはまるで映画のようでした。
広い海の中で、限られた文献などから沈没船などの位置を絞り、探査装置を駆使して範囲を決めて、潜水作業をする様子が描かれていますが、すでにアレクサンドリアのグレコ・ローマン美術館に寄贈されていた水中からの発見物の欠損部分を後に発見し、つなぎ合わせることができたなんて話は単なる調査を越えた奇跡に近い出来事です。このようにエジプトで次々と貴重な遺物を引き上げます。読むだけでは簡単そうに見えますが、やはり事前調査をしっかりと行った上での調査であることが、この軽い内容の文章からも読み取れます。内容がゆったりとしているので、学生のころに夢見た考古学を思いだしたい方はどうぞ(現実は違うのでしょうが・・・)
7月の東京国立博物館で開催される「クレオパトラとエジプト王妃展」を楽しみにしています。