神戸市立博物館のエジプト展へ行ってきました。
メトロポリタン美術館所蔵品から200点が海を渡って展示されているようです。
テーマは女王と女神ということで、それに関連するものばかりといえます。
展示ケースの下に解説があるのですが、来館者が多くて展示品が見えない人の
ために壁にも同じ解説が貼られていました。これは特に大勢の来館者が予想される展示では
よくある工夫です。また装身具関連の展示室は照明を落とし、金製品が映える工夫がされています。
博物館をもし行かれるのなら、このような展示の方法にも目を向けると、学芸員の工夫に気付きます。
さて、個人的には女王も女神もほどほどに、ガラスの展示を見ることが目的なのですが、ガラスは6点。
装飾品のところで多く見られましたが、それぞれは装飾品の1部に過ぎず、非常に小さいものばかりでした。
例えば「2つのガゼルの頭がついた冠」に見られる青緑色の部分がガラス。他のガラスもだいたいこのような小ぶりのものです。
ほかに「ヤマネコで飾られたカフ風のブレスレット」にある青緑色のパーツガラス。赤色は紅玉髄、紺色はラピスラズリ。
古代のガラスが貴石を模倣しようとして作られたという説がありますが、このように様々な貴石と組み合わされて装飾品が
作られていることからも分かります。
「トトメス3世の名が記された壺」はガラスでもファイアンスでもない物質ということで、ファイアンスからガラスへの移行期にあたる
ものだということで興味深いのですが、移行期なのか、本当は技術的に安定していなかっただけなのではということもあり、
区別が難しいところ。内側には青い粉がついていて、化粧品の粉だという説明がありましたが、製作過程で本体から析出した
粉のようにも見えます。ちなみにファイアンスとガラスはほとんど材料が同じですが、焼成温度がガラスよりも低かったために
材料がガラス化せずに結晶構造が残った状態のものがファイアンスと言われます。銅で着色することが多いので緑~青っぽい
色をしているものが多い。
非常に興味深いものとして「アメンヘテプ3世とティイ王妃の名が記された二連の筒状コホル入れ」にくぎ付けになりました。
これは後に吹きガラスで登場する「二連瓶」の原形だと思われます。二連瓶もコホル(化粧品)入れに使われたとされており、
この特殊な形状がローマ時代にも引き継がれたと考えると興味深い。二連瓶のようなものが一体何からこの形が生まれたのか
疑問に思っていましたが、原点がエジプトにあるのかもしれません。
ガラスは少なかったものの、このように面白い発見がありました。