Books:本の紹介

『古代ギリシャ フェニキア 地中海に生まれた文明の興亡』2010.10.01

『古代ギリシャ フェニキア 地中海に生まれた文明の興亡』
DVD 『フェニキア人 地中海の覇者』

古代ギリシャ フェニキア地中海の覇者フェニキア人

  • 2008
  • 日経ナショナル ジオグラフィック社
  • 141ページ
  1. 古代ギリシャ 第1部 英雄の時代
  2. 古代ギリシャ 第2部 栄光への道
  3. 古代ギリシャ 第3部 アレクサンドロス大王
  4. 地中海の覇者 フェニキア人

 DVD 『地中海の覇者 フェニキア人』

  1. イントロダクション
  2. 和解をもたらす船
  3. 無傷のDNAを探せ
  4. カナン人と海の民
  5. レバノン杉
  6. 宗教論争
  7. ジブラルタルの秘密
  8. 神殿での発見
  9. 重大な問題
  10. 次善の策
  11. 遺伝子が語る歴史
  12. クレジット

vitrum lab.評

『NATIONAL GEOGRAPHIC』日本版 2004 10月号中で取り上げられていたフェニキア人に関する記事がビジュアル保存版として刊行されたもの。フェニキア人の研究についてのDVD付きです。ナショナルジオグラフィックの本は写真が非常にきれいで、それだけで見入ってしまいます。専門書ではなく一般向けに書かれているので図説も豊富です。

ギリシャについては歴史を概観していくような形で書かれていましたが、フェニキア人に関しては興味深い研究者を取り上げていました。
ゲルハルト・ヘルム著『古代海洋民族の謎 フェニキア人』では「海の民」がカナン人を吸収合体してフェニキア人が誕生したという説をとっていますが、実際にはこれを証明するものはありません。旧約聖書に登場するカナン人は、エジプトの文書に登場するフェニキア人と住む場所が同じことからカナン人=フェニキア人だという考えもあります。

「海の民」とカナン人の混血=フェニキア人か、カナン人=フェニキア人か、あるいは別の出自か。この問題を全く別の側面からアプローチしている研究者がいます。彼らが着目したのはDNAです。普通なら変わることのない塩基配列は、混血されると変化しその痕跡は遺伝子にずっと記録されたままになります。この特性を利用し、1つのグループが他のグループと混ざった時期を探るのです。この場合、もし「海の民」とカナン人が混血したなら、その痕跡がフェニキア人の末裔、つまり現在のレバノン人の遺伝子の中に残っているかもしれないので、それを探すというものです。調査範囲はレバノンにとどまらず地中海の国々、例えばフェニキア人の植民地だったカルタゴのあるチュニジアなど、たくさんの人から血液採取して分析しています。今後の研究成果が楽しみであります。考古学的な手法以外の、しかも最新の研究はフェニキア関係のどの本からでもなく、この本によって初めて知りました。

・・・・とまあ堅苦しい印象を持ったかもしれませんが、内容は改めていいますと一般向けです。ほんとに写真がめちゃきれいです。

DVDではこの研究の他、古代フェニキアの船を復元した船大工の話もあります。2004年というと私がレバノンで発掘に携わっていた時と重なるのですが、復元の話を聞いたような聞いてないような・・・・今となっては思い出せませんが、その時知っていたらと悔やまれます。DVDの内容も一般向けで、N〇Kスペシャルを見てるような感じです。専門的に研究してる人も、そこまでではないが興味くらいはあるという人も見れる内容かと思います。ちなみにDVDだけでも販売しています。

vitrum labook

ここで紹介した本は下から選んでご購入いただけます。フェニキアシリーズは充実しています(笑)

2010.10.01 00:15 | , 考古学

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