『ガラス工芸 -歴史と現在-』
ガラス関係の本でこの博物館の存在を知り、ガラスのお話を聞こうと訪ねて学芸員の方とお話したことがきっかけでこの展示のことを知りました。その時はすでにこの展示は終わっていましたが、実際に作るという研究法がまだ日本では広く行われていない現状も知り、誰もやってなさそうな研究を探してたどりついたものが本当に誰もやってなさそうだったのでモチベーションが一気に上がりました。
といってもまったくガラスの技術がなかったので、とりあえず大阪の工房で体験することにし、何度か通いましたが、体験って息を入れて道具で少し触るくらいでほとんど職人さんが作ってしまいます。当たり前ですが・・・。
全て自分で作らないと意味がないと考え、徹底的に基礎から始めるつもりで工房を探していたら「ガラス講座」なる存在を知り、月賦で吹きガラスを作れるようになるように教えてくれる何ともありがたいコースがあるという。いわゆるカルチャーセンターです。しかも、これまた運がよかったのですが自転車でも通えるところにできたてほやほやのCセンターがあり、早速見学に行き、応募することにしました。
ところが吹きガラスってものすごい人気で抽選で外れてしまい、次の募集までの数ヶ月間は知識を固めることにし、そしてその時が来ました。・・・が、残念ながらまた外れてしまい、違うところで探そうかと思っていた矢先、なんと辞退された方がいて繰り上げ当選したのです。本当にツイテいました。
幸運はまだ続きます。
実はカルチャーセンター、基礎まではいいのですが、それからは作るものが決まっているのです。これまた当たり前ですが・・・・。
ということは復元がしたいと言ってもできないということで、いつかはここも卒業しなければなりません。ところが、またまた運のいいことに、講師として来ていた作家さんが、私がやらんとしていることに大いに興味を持ってくれまして、京都で工房を開いているからと誘って下さいました。マンツーマンで古代ガラスの復元製作です・・・・普通ならこんな状況ありえませんが。これほど有意義な研究をしたことはありません。余談ですが、偶然にもこの展示を京都の作家さんは見に行っていました。縁ですね~。
というわけで全てはこのカタログから始まったのです。
ガラス作家と美術館の共同研究は当時としては珍しく、今もこのような試みはあまり見られません。反響がよく、次に『ガラス工芸 -歴史から未来へ-』がこの続編として開催されたくらいです。
図版は古代吹きガラスが中心です。それから参加作家の作品と復元品が紹介されていますが、残念ながら復元工程の写真資料はほとんどありません。作家のコメントからその時の様子を想像するしかないところが残念ですが、それは続編の『ガラス工芸 -歴史から未来へ-』で掲載されていました。
美術館はあくまで資料を作家に開放しているだけで、考古学的な見解は最低限しか伝えていないように思われます。作家はそれで固定観念なしに自由な発想で復元制作に取り掛かることができたようで、出来上がる作品も古代から発想を得て自分なりのものに仕上げたものから、実物を正確に写し取ろうとしたものまでさまざまです。個人的にはもう少しルールを設けた方がお互い面白かったのではと思うのですが、実際に作るのと見るのとでは違うということが明らかになっただけでも大きな1歩だといえます。
ここで紹介した本は下から選んでご購入いただけます。博物館カタログはここでは無いことが多いので博物館に直接お問い合わせくださいませ。