『ガラス工芸 -歴史から未来へ-』
・・・今回試みた復元制作という手法にも、一定の限界はある。あるひとつの方法を通してオリジナル作品に近い形ができあがっても、ほかの方法で同じような結果が得られることがあるかも知れない。すなわち、復元制作というアプローチは、製作技法について唯一の真実を突き止めるのではなく、可能性の範囲を広げたり絞り込んだりするのにしばしば有効だということである・・・
この前身となった展示が『ガラス工芸-歴史と現在-』で、当時、岡山でこのような企画があること自体知らず、何かの本でガラスを所蔵している博物館として岡山市立オリエント美術館が紹介されていたので、電話でアポを取り、学芸員の方とお話をしたのが、私の古代ガラス研究の第一歩でした。その時はこの展示が終わったばかりの時でした。展示を観ることはできませんでしたが、大阪とは違う場所で同じような研究を同じ時期にしている偶然が何か縁のようなものを感じさせました。
それから二連瓶の研究を行い、復元制作をして再びこの美術館を訪れた時、この企画展示が準備されている時で、復元品を見ていただいた時、学芸員の方がたいそう驚かれ、その場で展示ケースに入れることを決めて下さいました。残念ながら本カタログのレイアウトは決まってしまっていたので写真は載せてもらうことはできませんでしたが、解説文に私の一考察を挿し込んで下さいました。初めて復元品と私の名前が世に出たということで忘れもしない展示です。この後、私が当時お世話になっていた京都の作家S氏と研究会に参加させて頂くなど、いろんな博物館で多くの方と知り合うことになるのでした。
前回の『ガラス工芸-歴史と現在-』でまかなえなかったガラス玉を中心とする所蔵品のカタログ、そして前回の復元制作の様子、作家紹介がここに収録されています。前回と同様、岡山県で活躍されるベテラン、若手ガラス作家と美術館のコラボ企画でおもしろい試みです。ひとつの場所に名だたる作家が集まり、議論することは滅多にありません。ただ、前回もそうでしたが、やや作家が中心になりすぎ、考古学的な視点が弱い点は、技術がともなう企画だけに仕方ないかもしれませんが、この点は今後、こういう研究が続けられるのであれば改善されていくでしょう(多分・・・)。
ここで紹介した本は下から選んでご購入いただけます。博物館カタログはここでは無いことが多いので博物館に直接お問い合わせくださいませ。