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『考古学のための化学10章』2010.10.08

『考古学のための化学10章』

考古学のための化学10章

  • 馬淵久夫
    富永健
  • 1981
  • 東京大学出版
  • 219ページ
  1. 考古学者からみた自然科学者(佐原 真)
  2. 考古学のために化学はなにをしたか(山崎一雄)
  3. 遺跡・遺物保存の化学(沢田正昭)
  4. 遺跡の年代をはかる -炭素14と年輪年代学(浜田達二)
  5. 土器の年代をはかる -熱ルミネッセンス法(市川米太)
  6. 人類史への模索 -フィッショントラック年代測定法(鈴木正男)
  7. 遺物はどこでつくられたか -化学成分を中心に(山崎一雄)
  8. 古鏡の原料をさぐる -鉛同位体比法(馬淵久夫)
  9. 遺物の製作技法をさぐる -メスバウアー分光法(富永 健)
  10. 遺跡の灰から穀物をさぐる -灰像による識別(渡辺直経)

まえがきより

・・・今までは全く無関係と思われていた自然科学の諸分野の研究者に、その専門知識と手法を用いた協力が要請されるようになってきた。一方自然科学者の側でも、人類の過去をさぐる研究に深い関心を示し、積極的に乗り出す人の数が増えてきた。これはわが国のみならず、世界的な趨勢でもある。・・・

vitrum lab.評

「化学」と題名にあるといっても、難しいものではなく「化学を中心としたお話」程度のものなので理系が苦手な人にも比較的分かりやすく書かれています。考古学と自然科学の融合したような学問という存在は、考古学=発掘というイメージしかもっていなかった大学入学したての時の私には衝撃的でした。化学はきらいでしたが、考古学と絡むのであれば苦痛ではありませんでした(とはいうもののやっぱり難しいことに変わりはありませんが)。

各章ごとにそれぞれ専門の方が書かれていますので必要なところだけ読むこともできます。この本には正倉院のガラスが登場します。これらのガラスがどこで作られたのかというテーマです。正倉院のガラスの多くは鉛が含まれている「鉛ガラス」で、鉛には4種の同位体があり、それらの比率は鉛の産地によって決まっているので、鉛ガラスの鉛同位体比が測定できれば、どこの鉛鉱物を使って作られたガラスなのかがわかるというものです。必ずしも鉛の産地=ガラス製造地とは限りませんが、ガラス製造地と鉛採集地との関係がどうなのか興味深い研究であり、このことは発掘状況だけではわからない情報です。

以上の他、ガラスとは直接関係はありませんが、応用できそうな手法が多く紹介されています。

vitrum labook

ここで紹介した本は下から選んでご購入いただけます。この本はいくつかシリーズがあります。

2010.10.08 13:43 | ガラス, 保存科学, , 考古学

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