『保存科学入門』
・・・保存科学は、伝統的な技術論を礎とした唯一の最新科学であり、それは産業技術の進展と相俟って展開していくべき面と、産業技術に還元する一面を持ち合わせた、独自の科学性をもつ。本書は、文化財全域の保存に携わる最前線の研究者によって保存科学のすべてを網羅した、新しく学ぶ者の入門書でもあり、専門家の必携の書にもなっている。・・・
発売当初は「ついにでたか」という感じでした。保存科学・・・出土品を含む文化財を後世にいい形で残していくために何らかの処理をしなければ朽ち果てていくだけですので、それをどうすればいいか?を研究する分野です。保存処理するにはまずモノの状態を知らなければいけませんので、科学的な手法で調査します。それによってモノの状態はもちろん、素材、技法などが分かることもあります。得た情報から総合的に判断して最適な保存処理を施していきます。そして最適な保管環境を整えて大切に後世に伝えられていくわけですが、このように保存科学には素材、技法、処理方法、処理に使う材料、保存環境など多岐にわたる研究が含まれており、学際的な学問と言われていましたが、今や一つの独特な学問となりつつあります。でも日本の保存科学の歴史は浅いのでそれをどう体系化して、若手を育てていくかが課題となっています。
そんな現状ではありますが、着々と成果は積み重ねられてきて、保存処理をする専門家も考古学的な知識を身につけてきたりして、ただの保存処理にとどまらず、保存科学的な研究によって明らかになった情報からこれまでにはない解釈が展開されることもあります。本書ではそのようなあらたな学問の展開を垣間見ることができる内容となっています。現在の保存科学を担う様々な研究者が各自研究対象としている素材のことを書かれているので、全部読まなくても、興味あるところだけかいつまんで読んでもいい本です。
ここにきてようやく古代ガラスについても2章にて単独で取り上げられています。主に日本のガラス玉に関しての研究ですが、成分分析や技法、緊急保存処置について書かれています。ちょっと目が離せなくなってきました!
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