Books:本の紹介

ユダの福音書2010.11.18

DVD 『ユダの福音書』

 ユダの福音書

  • 2006
  • 日経ナショナル ジオグラフィック社
  • 86ページ
  1. 『ユダの福音書』の基礎知識
  2. 多様な初期キリスト教とグノーシス派
  3. 『ユダの福音書』の衝撃
  4. 原典 ユダの福音書

vitrum lab.評

『NATIONAL GEOGRAPHIC』2006.5月号中で取り上げられていた記事がビジュアル保存版として刊行されたもの。DVD付きです。本の方が福音書の内容、DVDの方がこの福音書の発見のいきさつや、保存修復処理、各専門家のインタビューなどが収録されています。私は2006年4月の新聞で「ユダ裏切ってなかった?」という見出しで記事になっていたのを読んで知りました。

ユダの福音書の発見は一時期大きな話題となりました。聖書に疎くても、ユダがイエスをローマ軍に売り渡し、イエスは十字架に磔にされたという話はほとんどの人が知っていると思います。裏切り者の象徴としてユダは今も受け継がれており、動物の名前にすらユダという名はつけられないとか、国によってはこの名前を子供に付けることが禁じられているところもあるようです。それくらい悪いイメージがつきまとうユダですが、実はローマ軍に引き渡すようにイエスがユダに指示したということが、この福音書に書かれているというのです。つまりユダは裏切り者ではないということです。これが本当だとしたらこれまで信じてきたことが覆るかもしれないくらい衝撃的なことです。

といっても、聖書の解釈は様々で、みな一様ではなかったようで、現在、正統とされている4つの福音書が選び出される前はいくつもの福音書なるものが存在しており、ユダの福音書もその内の1つであったといいます。それぞれの解釈を信じるグループがいたことは確かですが、歴史的にそれらの内容が真実だったかどうかは分かりません。

DVDではあくまで客観的にこの福音書を追うという立場で収録されており、「ユダは裏切り者ではありません」ということを強調はしていません。発見されたいきさつや、さまざまな研究分野の専門家によってどのようにこれが本物であると断定されたのか、という内容が中心です。個人的にもそういう内容で良かったと思います。聖書に疎い私でも普通に観ることができました。

vitrum labook

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2010.11.18 23:12 | 保存科学, , 考古学

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