第1部 考古学の枠組み
第2部 人類の様々な経験を発見する
5. どのように社会は組織されたのか―社会考古学
6. 環境とは何であったか―環境考古学
7. 人は何を食べていたのか―生業と食性
8. 人はどのように道具を作り使ったのか―技術
9. 人はどのように交流していたのか―交流と交換
10. 人は何を考えたか―認知考古学・芸術・宗教
11. 人とは何者でどのような存在だったのか―人の考古学
12. 物事はなぜ変化したのか―考古学における説明
第3部 考古学の世界
13. 考古学の実践―5つのケース・スタディ
14. 過去は誰のものか―考古学と社会
本書は2004年にイギリスから出版されたColin RenfrewとPaul Bahn著『Archaeology: Theories, Methods and Practice』の訳書です。原著は1991年初版で、翻訳されたのは第4版。この本のすばらしいところは、版を重ねるたびに最新情報を折り込んでいるところで、考古学という学問が発展するとともに本も発展しているのです。考古学がどのように発達してきたのかから始まり、どのような資料に対してどのような理論と方法が用いられ、どのように解釈されているのかといったことを、世界中の発掘例を紹介しながら解説しています。現在、考古学で用いられているあらゆる理論や方法が、ほぼあますことなく登場しています。考古学関係の本でおそらくこの本を超えるものはないのではないでしょうか。英語で出版され、その後はたくさんの言語で翻訳されていることが、本書のすばらしさを表しています。
この本(第2版)との出会いは大学1年か2年の頃、考古学購読という授業で使いました。1部を学生が役割分担で翻訳するという授業でしたが、海外でもやはりこの本は大学生や大学院生、あるいは考古学者向けの本だということです。作者いわく、一般の人にも考慮した内容となっており専門書の割にはやさしめの書き方をしていると思います。大学ではたしか考古学の目的は4W1H(Who When Where What How 誰がどこでいつ何をどのようにして)を解明することだと習ったかと思うのですが、本書もだいたいそんな感じで構成されています。この目次を見て、大学で習ったことを思い出しました。しかし、これらを解明するための方法は非常にたくさんあり、また、どれとして完ぺきな方法はないことから、それぞれの状況にあった方法を考古学者が選択しなければなりません(それも複数が望ましい)。そして選択するにはどういった理論が可能なのかを知っていなければ誤った選択がなされてしまいます。
とにかく、現代には失われた過去の情報を出来る限り正確に読み取るには、あらゆる手段を駆使し、出来る限り正確に解釈しなければならないということです。ややこしいことに解釈の仕方もその時代の風潮などの影響を受けることもあり(例えば黒人差別が激しかった時代では、白人を優位な立場に置く傾向があったなど)、当時正しいとされていた解釈にも注意が必要となるなど、解釈には細心の注意が必要なのだということを教えてくれます。考古学の醍醐味は学問を超えてあらゆる分野の方法を借用して上述した目的を果たそうとするところにあります。本書はそのような考古学の魅力をうまく言葉で伝えています。最後には簡単な語句解説も掲載されています。
ここで紹介した本は以下で取り扱っております。