「・・・アートに携わる者にとって、特にこれから学ぼうとする者にとって、科学や工学の立場からの著書の多くは、なかなか取っ付きにくいと感じれらるのではないだろうか。一方でアートの立場からの著書においては、科学的な側面に関しての扱いはあまり多くはなく、ガラス材料やガラスつくりの本質をもう少し深く学びたいという目的に対しては、必ずしも充分とは言えないのではないだろうか。・・・」
学生の頃と比べると最近はガラス関連の本が増えてきたように思えます。考古学的視点でガラスをみると、考古学会に求められているような「文理融合型研究」が古代ガラス研究にもしっかりと浸透してきています。つまり、文系出身者が多い考古学者にも科学的な知識や技術が必要とされてきており、また、ガラスはさらにそこへ芸術的感覚も求められるかもしれません。しかし、科学分野からガラスに触れた本は非常に難解で、書かれてある公式の見方もさることながら、単位の読み方も分からないことが多いくらいです。個人的に文理の橋渡しをしてくれるような本がないのか心から願っていました・・・。そこで本書です。
本書は上記の「はじめに」にあるように、アートの立場からは取っ付きにくかった理系的な内容をかなりくだいて分かりやすく解説しています。相変わらず公式などはいまいちよくわかりませんが、それでも読めばどういうことなのか分かりやすく書かれていました。別に公式を理解しなくても読み進めることができるようになっています。分かった気分になっていた部分もこれでちゃんと整理がつくかと思います。古代ガラスの研究といえども、分析化学系の知識はいくらか必要なときがありますが、専門的なものに行くまえに、この本をまず読んでからの方が分かりやすそうです。考古学者が科学視点でガラスをみる力を養う時にはこの本をおススメします。そんな本なので学生さんにもおススメです。もっと早く読めばよかった・・・
余談ですが、ガラスの保存科学にも役立ちそうな内容も含まれていました。
ここで紹介した本は以下で取り扱っております。