ガラスの成分分析を盛んに行われている中井先生の著書。116ある元素ひとつひとつに対し「考古学、生命科学、芸術など、さまざまな視点から見た元素の世界を解説!」と帯に書いてあるように、単に化学的な解説に留まらず、むしろ、化学の堅苦しい話は抜きにして非常に簡潔な内容にまとめられていて文系の人にも読める内容です。
ガラスに関しては116ある元素の中でガラスに使われているものは限られているものの、いくつか取り上げられており、特に現代ガラスにはあまり聞いたことがない元素も使われているようで、普段みえないところでもいかに様々な元素が使われているかが分かります。近年話題になったレアアースはその名のごとく稀少な存在ですが、研究でしか使用されていないような、ものの数秒で放射壊変してしまうような放射性元素も入れて116の元素があるとなると、実用的なものは限られているような気がします。フランシウムなぞは地球に20~30グラムしか存在していないと言われているようで、その実態を掴む実験中に枯渇してしまうのではないかと心配になります(笑)。
いずれにせよ、文化財化学に携わる以上は、さまざまな元素が登場します。それらひとつひとつの特徴を簡潔に知る入門書としては楽しい本でした。