Books:本の紹介

『マチュピチュ探検記』2014.10.01

『マチュピチュ探検記』

 

  • マーク・アダムス著 森 夏樹 訳
  • 2013
  • 青土社
  • 445ページ
  1. オズの国からきた男―ペルーのクスコ
  2. 「へそ」の情報―クスコ(続き)
  3. 3人のハイラム―ハワイのホノルル
  4. 息子の母親との出会い―ニューヨーク
  5. 旅する学者―バークレー→ケンブリッジ→プリンストン
  6. 荒野の呼び声―ニューヨーク
  7. 探検家―ベネズエラとコロンビアの横断
  8. 失われた都市の伝説
  9. 脂肪を抜き取られないようご用心―ペルーのリマ
  10. ペルーの標準時間―クスコ
  11. 路上で―カパック・ニャンを西へ
  12. 出だしでつまづく―チョケキラオへ向かうまで
  13. 黄金のゆりかご―チョケキラオで
  14. ラバの足蹴りとニワトリの鳴き声―チョケキラオで(続き)
  15. 悪魔との取引き―コネティカット州ニューヘーブンとペルーのカハマルカ
  16. 遭難信号―アンデスのどこかで
  17. 小さからぬ計画―ニューヘーブン
  18. はるか遠く―ペルーのヤナマ
  19. 上へ上へ、そしてはるか先へ―チョケタカルポ峠
  20. 手掛かりを探して―クスコ
  21. 宿屋「シックスパック・マンコ」-ペルーのワンカカイエ
  22. いくらうわべが変わっても―プキウラで途方に暮れて
  23. 幽霊大農園―ペルーのワドキニャ
  24. 白い砦―ビトコスで
  25. ビルカバンバへの道―ペルーの熱帯雨林のどこかで
  26. 地図にない場所―コルパカサ峠を越えて
  27. トラブル―ビスタ・アレグレに近づく
  28. 雨の降るときは―コンセビダヨク
  29. 霊たちの平原―エスピリトゥ・パンパで
  30. 老婦人の秘密―エスピリトゥ・パンパで(続き)
  31. 待機―サンタ・テレサの近くで
  32. うまく歩けない―リャクタパタで
  33. 歴史家が歴史を作る―マンドル・パンパ
  34. 上へ登る―マチュピチュで
  35. 大きな絵―マチュピチュの高みで
  36. スター誕生―ニューヨークとワシントンDC
  37. 真実を彫り探す―マチュピチュやその周辺で
  38. イェール大学VSペルー―ワシントンDC
  39. アクション・ヒーロー―「ナショナル・ジオグラフィック」の誌面で
  40. 聖なるセンター―ニューヨークとアパラチア山脈の間で
  41. どういうつもりだ?-ニューヘーブン
  42. 2度目のチャンス―ニューヨークとリマの間で
  43. 最後の聖戦―ウルバンバ渓谷へ下りて
  44. パオロといっしょの夕食―リマ
  45. 大幅改訂―地図上の至る所で
  46. ロクサナは意見が違う―クスコ
  47. ビンガムの跡を追って―オリャンタイタンボ、そしてその先へ
  48. 巡礼者たちの巡歴―インカ・トレイルで
  49. 「アプス」の紳士録―プユパタマルカで
  50. 太陽の神殿―マチュピチュのトレオンで

vitrum lab.評

マチュピチュはアメリカの探検家ハイラム・ビンガムによって発見されました。トロイを発見したシュリーマンといい、何かしら歴史上の大発見をした人物は夢をかなえた人物としてもてはやされがちですが、詳細をみていくと、称賛の声ばかりではないことに気づかされます。ビンガムもその一人で、ペルーでは盗掘者呼ばわりされ、ペルーはビンガムが所属し、遺物の保管先でもあったイェール大学へ返還要求するなど事態はどうも複雑なようです。著者はジャーナリストで、ペルーのこの動きによって、称賛されるばかりだと思われていたビンガムに関心を抱き、彼は本当に盗掘者で、マチュピチュ発見の偉業はみとめられないものなのだろうか?と彼を跡を追う旅に出ることを決意します。ビンガムと同じ足跡をたどり、彼が何をどう感じ取ったのかを知ろうとインカの道を辿ってマチュピチュを目指します。

これはマチュピチュを歴史的に考証していくというような内容ではなく、一ジャーナリストがビンガムという人物に興味を持ち、彼の足跡を辿りながら、時々時代をスペイン征服時代に戻して解説を加え、また時々100年ほど前のビンガムの時代の状況を伝えながら読者と一緒に旅をするという内容です。著者が辿った道はビンガムが辿った道であり、スペインの征服から逃れようとしたインカの王が辿った道でもあり、読み手は地球を俯瞰しているような感覚になります。遠くから地球という星のペルーと呼ばれる国をずっとみているとある人間がインカ帝国を築いた。やがてスペインと呼ばれる国から征服者がやってきてこの帝国は支配される。それから400年~500年たったころ探検家がここを訪れ、大発見をする。さらにその100年後その彼の足跡をたどってジャーナリストが同じ道を辿りだす。そんな感じで読む探検記でした。

ペルーでは墓泥棒呼ばわりされて人気が今一つなビンガムですが、それでも認められていることはあって、マチュピチュを世界に知らしめたことは評価されているようです。彼が発見した時、マチュピチュには人が住んでいて、実はそれより前にもどうもマチュピチュを知っていた人がいるらしいという話もあって、そうするとビンガムは第一発見者でもなんでもないのですが、この魅力あふれる遺跡を世界に認知させた。それにより国が保護しようと動き、整備されいま世界中から人が押し寄せる人気スポットになっています。

それにしてもこのジャーナリストは、ビンガムのへの関心から長い道のりを歩き、危険な斜面を登り、草を切りながら進み、マチュピチュへ本当に行ってしまうのだから面白い。だからといって今度はこのジャーナリストの足跡をたどろうとは思いませんが(笑)、マチュピチュは死ぬ前に1度は訪れたい場所です。

vitrum labook

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2014.10.01 01:22 | その他, , 考古学

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