『マチュピチュ探検記』
マチュピチュはアメリカの探検家ハイラム・ビンガムによって発見されました。トロイを発見したシュリーマンといい、何かしら歴史上の大発見をした人物は夢をかなえた人物としてもてはやされがちですが、詳細をみていくと、称賛の声ばかりではないことに気づかされます。ビンガムもその一人で、ペルーでは盗掘者呼ばわりされ、ペルーはビンガムが所属し、遺物の保管先でもあったイェール大学へ返還要求するなど事態はどうも複雑なようです。著者はジャーナリストで、ペルーのこの動きによって、称賛されるばかりだと思われていたビンガムに関心を抱き、彼は本当に盗掘者で、マチュピチュ発見の偉業はみとめられないものなのだろうか?と彼を跡を追う旅に出ることを決意します。ビンガムと同じ足跡をたどり、彼が何をどう感じ取ったのかを知ろうとインカの道を辿ってマチュピチュを目指します。
これはマチュピチュを歴史的に考証していくというような内容ではなく、一ジャーナリストがビンガムという人物に興味を持ち、彼の足跡を辿りながら、時々時代をスペイン征服時代に戻して解説を加え、また時々100年ほど前のビンガムの時代の状況を伝えながら読者と一緒に旅をするという内容です。著者が辿った道はビンガムが辿った道であり、スペインの征服から逃れようとしたインカの王が辿った道でもあり、読み手は地球を俯瞰しているような感覚になります。遠くから地球という星のペルーと呼ばれる国をずっとみているとある人間がインカ帝国を築いた。やがてスペインと呼ばれる国から征服者がやってきてこの帝国は支配される。それから400年~500年たったころ探検家がここを訪れ、大発見をする。さらにその100年後その彼の足跡をたどってジャーナリストが同じ道を辿りだす。そんな感じで読む探検記でした。
ペルーでは墓泥棒呼ばわりされて人気が今一つなビンガムですが、それでも認められていることはあって、マチュピチュを世界に知らしめたことは評価されているようです。彼が発見した時、マチュピチュには人が住んでいて、実はそれより前にもどうもマチュピチュを知っていた人がいるらしいという話もあって、そうするとビンガムは第一発見者でもなんでもないのですが、この魅力あふれる遺跡を世界に認知させた。それにより国が保護しようと動き、整備されいま世界中から人が押し寄せる人気スポットになっています。
それにしてもこのジャーナリストは、ビンガムのへの関心から長い道のりを歩き、危険な斜面を登り、草を切りながら進み、マチュピチュへ本当に行ってしまうのだから面白い。だからといって今度はこのジャーナリストの足跡をたどろうとは思いませんが(笑)、マチュピチュは死ぬ前に1度は訪れたい場所です。
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