『カルタゴ興亡史 ある国家の一生』
掲載した表紙は2002年発行のものですが、中身は同じで1991年発行のものを読みました。
その表紙にはフェニキア人頭玉と呼ばれる、ガラス玉の写真が掲載されており、それにつられて
購入しましたが、ガラスのことは一切でてきません(笑)。
さて、内容は目次の通り、カルタゴが成立してから滅亡するまでの歴史が淡々と述べられています。
カルタゴには同じ名前の将軍が何人も登場してややこしいのですが、違いが分かるような書き方をして
くれています。
カルタゴと言えばローマ帝国と渡り合ったフェニキア人の植民地として有名ですが、その中でも
カルタゴ軍のハンニバルとローマ軍のスキピオとの戦いは特によく知られており、世界史の授業では
「カンネーしろとハンニバル、ザマみさらせとスキピオ」と覚えました。カンネーの戦いでハンニバルが
アルプスを越えてイタリアに入り、ローマ軍の背後をついて勝利目前まで迫りますが、最終的には
ローマ軍のスキピオがアフリカに上陸、ザマの戦いで勝利したという名勝負です。
とはいえ、この戦いがあまりにも有名なため、他の細かいいきさつは知りませんでしたが、
本書ではあくまでこの戦いは長いカルタゴ史の1部として扱われており、この有名な戦争
以前と、ローマに敗れて以降のハンニバルの行動もしっかりと描かれています。研究書では
ないため、読みやすくなっていますが、遺跡や考古学的物証による議論を期待する人には
逆にもの足らないかもしれません。 あくまで一般向けの内容です。
ローマはカルタゴを滅ぼして以降、強大な帝国を築き上げますが、カルタゴに負けていたら
がらりと違う世界になっていただろうと思います。吹きガラスはローマ帝国の発明品ですが、
ガラスに関わらず、現代まで続くあらゆる技術の原点がローマ時代に遡ることができます。
カルタゴ帝国ができていたとしたらどうだったでしょうか。ただ、本書を読めば、選手層の厚さと
中枢の機能がすぐれていたローマに勝てる見込みはやはりなかったように思います。
ローマ帝国がカルタゴを今後誰も住めない土地にしようと完膚なきまでに叩きのめしたため、
当時のカルタゴ側からの資料はほとんど失われてしまい、今こうしてカルタゴのことが分かるのは
実はローマ側の資料が残っているためです。そのため、カルタゴに対して歪んだ見方で書かれて
いるものもあり、資料の扱いには注意が必要と言われています。当時は吹きガラスが発明される以前の時代で、
ガラス玉がたくさん作られ、フェニキア人の交易によって遠くまで運ばれていたことが分かっています。
とはいえ、当時の技法については不明な点が多く、 失われた資料の中にそれらに関わるものがあったのかもしれません。
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