神戸市立博物館で開催中の
「大英博物館展-100のモノが語る世界の歴史」展に行ってきました。
すでに「本の紹介」ページにてこの展示関連の書籍に少しだけ触れましたが、
モノが広範な時代と地域の中から選ばれた展示だけあって、壮大でありながら、
すっきりとまとめられていたので、とても分かりやすく楽しめました。
よくあるパターンとして時代別や地域別といった展示の仕方が博物館では見られますが、
時代順にはまとめられているものの、地域がアフリカのモノが展示されていたと思うと次には
オーストラリアのモノが展示されていたりと、世界を上から俯瞰しているような感覚になります。
俯瞰して見た世界地図には国境がなく、ヨーロッパのある時期では〇〇のようなモノが作られていたが、
同じような時代、南米では□□のようなモノが作られていた、といったことが一目で分かる。
一見、別々の時代・地域からまんべんなくランダムに選ばれたように見えるモノたちですが、
「文明の誕生」「帝国の興亡」などテーマを設けることで、それらのモノがどこかのテーマに所属することになり
全体に統一感を与えています。
さて、ガラスは数えるくらいしか登場しません。ガラス品そのものが3点、あとは装飾の1部といった感じで
2点ほどだったかと思います。その中でも珍しいなと思うガラスは「聖ヘドウィグの杯」。「ヘッドウィッヒ・グラス」
とも呼ばれており、シレジア(現ポーランド南部)の伯爵夫人ヘドウィグ(1174-1243年)が愛用したガラス器
であることからこの名がついたもの。アメリカのコーニング・ガラス美術館やドイツのゲルマン国立美術館にも
同類のガラスが所蔵されていますが、いずれも鷲、ライオン、グリフィンがレリーフ・カットされていることで共通
しています(由水1992, p206、谷一2011, p48)。本展示ではシリアで製作とされていますが、時代でいうとイスラーム・ガラス
に当たるとはいえ、由水氏はカットのモチーフがイスラーム・ガラスではあまり見られないこと、ビザンティン帝国の
ガラスと一緒に出土した例があることなどから「ビザンティン・ガラス」に分類しています。しかし、「ローマ・ガラス」
「イスラーム・ガラス」とは違い、「ビザンティン・ガラス」については詳細が不明な点が多く、ガラス史的には位置づけが
難しいガラスです。そのせいか、このガラスが展示されるのをあまり見たことがありません。
この展示の紹介HPも凝っていて、なかなかの力の入れよう。面白い。
・由水常雄 1992 『世界ガラス美術全集』1 古代・中世
・谷一 尚 2011 『世界の切子ガラス』