『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』上2017.05.07
『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの』上
- ジャレド・ダイアモンド著 楡井浩一 訳
- 2012
- 草思社
- 533ページ
- ふたつの農場の物語
- 現代のモンタナ
- 過去の社会
- 最後に生き残った人々-ピトケアン島とヘンダーソン島
- 古の人々-アナサジ族とその隣人たち
- マヤの崩壊
- ヴァイキングの序曲と遁走曲
- ノルウェー領グリーンランドの開花
- ノルウェー領グリーンランドの終焉
vitrum lab.評
ジャレド・ダイアモンドによる時空を跨いだ壮大なスケールで描く歴史観。ただし、テーマは「滅亡」。
まず最初に現代のアメリカの自然豊かなモンタナについて語られます。経済至上主義とは縁のないように見える
自然豊かなこの地域にも避けがたい現代的な問題、特に環境破壊問題の波が押し寄せており、それによって
限られた土地・水の争奪戦、それによる人間関係の問題があぶり出されます。ここから過去に滅びた文明に話がうつり、
滅亡の原因について分析が始まりますが、それらには著者独自の崩壊パターンがあり、おおざっぱかもしれないけれども
的を得た議論のように思えます。それは当然、現代文明にも当てはめることができ、過去の文明から未来の在り方を学ぶことが
できるかもしれない。
例えば環境破壊。製鉄、薪、放牧などによって森林伐採や草原の消失がそれらの回復力を上回ってしまうと、土壌が露出し、雨により
養分が流され、ますます草木が育たない土地へと変わる。過去に栄えた文明では、もともと森林豊かだった場所が多いというのはよく聞く話。また、貿易相手国が環境破壊によって滅びたために、そのあおりを受けて 滅亡もしくは悲惨な目に遭ったというパターンもある。
特にこのパターンはグローバル化がなにも現代初のシステムではなく、すでに過去において実践されているシステムであり、そのリスクも
経験済みであることを意味しているが、 経済的なメリットばかりに焦点が行きがちなため、再び同じ轍を踏む可能性がある。
上巻では滅亡の事例を挙げて終わっていますが、この先どのように展開していくのか。ジャレド・ダイアモンドは悲観論者ではなかった
はずだったので、過去の事例をもとに将来どうあるべきか、その答えを聞くことができるのかが下巻の楽しみ方になりそうです。
vitrum labook
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2017.05.07 23:05 |
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考古学