『古代のイギリス』
以前に紹介したことのある『海のかなたのローマ帝国』の著者による翻訳。著者によるとイギリス史の研究において、ローマ帝国領になる以前の「野蛮人」が、帝国領になったことで文明化されていったという見方がかつては強かったが、現在は、すべての先住民がローマ化を歓迎したわけではなかったという見方もでてきているとのことでした。今回の『古代のイギリス』はまだローマ帝国によるローマ化という考えが強かった時代に書かれたものであり、本書でもローマ帝国側からみた歴史の見方で書かれています。ただ、訳者は最後の解説のところで、原住民側からみたイギリスの歴史がまだ描かれるに至っていないため、現段階ではローマ帝国側からの視点で研究されるのは当然のことであり、研究の視点の賛否はともかくイギリス史の研究上、読むべき本だと位置づけていました。歴史とは勝者によって描かれるものであると言われますが、まさにそれがよくあてはまるのがイギリスの歴史なのかもしれません。本書の最後にはイギリスの歴史に詳しい訳者による解説書があり、本書の内容と照らし合わせてイギリスの見どころが紹介されていて、奥深さを実感できました。
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