*ここからは発表内容について。ただ、私が発表内容を聞きながら書き取り、レジメも参考にしつつ、備忘録として手元にある資料も使ってまとめたもので、
どうしても聞き逃しや、レジメや口頭での発言に誤りがあったりすることもあるため、内容を100%網羅しているわけではないことご了承くださいませ。
ササン朝ペルシア(3世紀~7世紀)の領土内で製作されたガラスで、ガラスが発達していたローマ帝国と接していたため
ローマ・ガラスも多く流入していた。6世紀頃になると他には見られない特徴を有する、まさにササン・ガラスと言われるガラスが
多く見られるようになる。
ササン・ガラスと分かるものとして「円形切子」「浮出円形切子」「二重円形切子」のガラスがある。
↑ 左2点:天理参考館2012、右1点:深井1973
これらはいずれも国内からも出土している。例えば・・・
円形切子・・・正倉院白瑠璃碗、伝安閑天皇陵出土碗
浮出円形切子・・・沖ノ島(破片)
二重円形切子・・・上賀茂神社(破片)
6世紀以前のガラスはローマ・ガラスの模倣が多い。例えば下図は左がローマ・ガラス、右が初期ササン・ガラス。
黒海北岸 タナイス出土(2~3世紀)
イラク テル・マフーズ出土(4世紀頃)
ガラスの主成分は
①シリカ・・・砂。ガラスの大部分を占める。これだけ熔かしてもガラス化するがあまりにも熔融温度が高い(1700度以上)
②アルカリ分・・・熔融温度を下げるはたらき。古代オリエントではナトロン(ソーダ石灰)と植物灰が主に用いられた。最初は植物灰、前1000年紀頃から
地中海域でナトロンが使われ、イスラーム期に再び植物灰が使われるようになる。
③石灰分・・・アルカリ分は水に溶けやすいため、これを添加して安定させる。
の主に3成分。
特にアルカリ分は時代によって使用された原料が違う。植物にはKやMgが多く含まれるため、これが多く検出されると「植物灰ガラス」ということになる。
6世紀のオリエント世界のガラスは、 地中海域(ビザンティン帝国)の「ナトロン・ガラス」とササン朝領域の「植物灰ガラス」に大別される。
・・・続く
引用文献
・天理参考館2012 『2012年『シルクロードを彩る人工の華 古代ガラス』展図録』
・深井晋司1973 『ペルシアのガラス』