『興亡の世界史03 通商国家カルタゴ』
・・・西洋古代史を考える上で重要でありながら、従来、正面から取り上げられることの少なかった、古代地中海のいわば「失われた半分」の歴史を復元するためのささやかな試みである。フェニキア人のフェニキア本土および植民市の歴史-そのフェニキア人の活動がギリシア勢力と均衡しつつ作り出していたローマ以前の地中海の歴史-をある程度包括的に描き出すことで、ローマとカルタゴの対決に収斂しがちなこのテーマに、いくらかでも鳥瞰的視点を加えることができればと思う・・・
フェニキア関係の本で日本人研究者による本。これまで翻訳本がほとんどだったフェニキア研究が日本人によって書かれたという点で画期的な本といえます。最初にカラー写真が数ページあり、そこにはガラスの写真もあります。地図もカラーで見やすく、そして最後に索引もついています。
全体としては目次を見て分かるように、フェニキアの歴史を順に追っていく形ですが、各章とも最新の成果を基にした非常に細かい記述です。これまでの本にあったように現代人にとって興味をひくような人身御供の儀式や、ローマとの戦争にカルタゴは一度は勝利寸前までいくも、最終的に完膚なきまでに叩きのめされるドラマチックな説話を語る記述はもはやそこにはなく、冷静に分析しているところが逆に真新しく感じます。フェニキア関係の本の中では最もおススメです。ちなみにレバノンで発掘していた時に出土した、タニト神が刻印された分銅が登場します!
ガラスのことはほんのわずかに取り上げられています。やはり人頭玉が登場します。
ここで紹介した本は下から選んでご購入いただけます。フェニキアシリーズは充実しています(笑)