『イエス』
『ジャンヌ』に続く安彦氏第2弾。『ジャンヌ』執筆中に本書を描こうと思われたそうです。キリスト教が関わるお話ですので。
本書ではイエスは神がかりな奇蹟を起こす神の子としてよりも、人々に教えを説く教師的な存在、すなわち人として描かれています。従って、聖書の解釈の中で最大の謎ともいえる、「イエスの復活」もそのように解釈して描かれています。『ジャンヌ』と同様、イエスを主人公にするのではなく、ヨシュアという弟子の一人である青年(実在したのかどうかは分かりませんが)を通してイエスの人生を描いています。イエスは謎の多い人物ですし、その考えはあまりにも宗教的に影響が多いので、このやり方で客観的にイエスの行動を描いたのではないかと思います。
ひとりの人間としてイエスを描く、宗教になじみのない日本人にとってこのように描かれることが一番しっくりくるのかなと思いました。しかし数々の奇跡を全て科学的に解釈することも難しいようで、今なおイエスについてはわからないことだらけのようです。
余談ですが、ユダはイエスをローマに売った裏切り者だというのは有名で、本書でもそのように描かれていますが、数年前、「ユダの福音書」が発見され、実はユダは裏切ったのではなくイエスの指示に従ったのではないかという解釈が提示され話題になりました。詳しくは『NATIONAL GEOGRAPHIC』2006.5月号、 『ビジュアル保存版 ユダの福音書』 、『原典 ユダの福音書』、『ユダの福音書を追え』を参考にしてみて下さい。
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