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『原典 ユダの福音書』  – Vitrum Lab.

Books:本の紹介

『原典 ユダの福音書』 2011.01.08

『原典 ユダの福音書』

原典 ユダの福音書

  • ロドルフ・カッセル(スイス・ジュネーブ大学人文科学部名誉教授 コプト語学者)
    マービン・マイヤー(アメリカ・チャップマン大学聖書・キリスト教学科教授)
    グレゴール・ウルスト(ドイツ・アウグスブルク大学教授)
    バート・D・アーマン(アメリカ・ノースカロライナ大学チャペル・ヒル校)
  • 2006
  • 190ページ
  • 日経ナショナル ジオグラフィック社
  1. 原典 ユダの福音書
  2. チャコス写本と『ユダの福音書』(ロドルフ・カッセル)
  3. よみがえった異端の書(バート・D・アーマン)
  4. リヨンのエイレナイオスと『ユダの福音書』
  5. 『ユダの福音書』とグノーシス主義

[はじめに]より

本書は、『ユダの福音書』を現代によみがえらせた最初の出版物となる。この福音書は、初期キリスト教会で読まれ、エジプトで隠されて以来、人の目に触れることはなかった。ところが1970年代にエジプト中部で、パピルス写本として発見された。この写本は、いまではチャコス写本と呼ばれている。見つかったのはコプト語訳版だが、原典は2世紀半ばにギリシャ語で編纂されたものである。

vitrum lab.評

歴史的大発見として取り上げられた『ユダの福音書』は、保存状況が最悪な状態だったため、時間をかけて修復されました。それから複数の専門家による研究が行われたため、本書はまず福音書の翻訳を掲載し、それから複数の著者の記述からなる構成となっているので、さまざまな視点で迫ることができます。ちなみに、翻訳部分はDVD 『ユダの福音書』とほとんど同じですので、翻訳だけを読みたいのであれば、DVD 『ユダの福音書』を読めばよいでしょう。

第2章を書いたロドルフ・カッセルは福音書の修復・翻訳を指揮した専門家で、彼の記述内容は福音書がどのような経緯で修復までに至ったのかということが書かれています。発見から複数の古美術商の手に渡り、その間劣化し続け、ようやく修復されたのですが、そういった経緯が書かれています。さらなる詳述は『ユダの福音書を追え』を読むとよいです。これはノンフィクションですが推理ものを読んでいる感じで面白かったです。

第3章を書いたバート・D・アーマンは初期キリスト教研究の第一人者で、このユダの福音書に書かれている特異な内容について解説しています。大まかにいえば、現在正統とされている福音書は4つありますが、初期のキリスト教時代にはもっと様々な教えがあり、それらを信仰する宗派がいました。しかし、この4つ以外を異端として、その他の宗派を認めなかったため、書き写すこともされず忘れられました。そのいくつかが現在まで奇蹟的に残って当時の様子を伝えていますが、ユダの福音書もその1つということになります。ただ、内容としてはこれまで見つかったものとは異なり、ユダだけが真実を知る者としてイエスに認められており、イエスを肉体から解き放った唯一の人物であるとして英雄扱いされているのです。このユダ像はこれまで知られてこなかったもので、つまり、今正統とされているものはあくまで当時の教会が選んだのであって、そうでなければ様々な教えがあり、今の教えがすべてではなかったのだということになります。こういった説明を分かりやすく解説していました。聖書のお話を知らない私でも分かりました。

第4章はドイツで教会史などを教えるグレゴール・ウルストによって書かれたもので、彼のタイトルにある「エイレナイオス」は2世紀の司教の名前です。エイレナイオスは正統派以外の教えを全て批判している人物です。ユダの福音書が見つかる前、彼の書いた本に名前だけは登場していましたが、それが実在するものだったのか分かりませんでしたが、発見されたユダの福音書はおそらく彼が言及していたものと同じだろうと言われています。名前だけ知られていた福音書でしたが、それまでは異端扱いしていた側からの情報でしかその内容を推し量ることができなかったのが、実際に発見されたことで、その立場にある側からの考えが示されたというような内容です。

第5章はグノーシス主義の権威マービン・マイヤー著。グノーシスとは知識という意味で、この宗派はイエスを信じたり、善行をしたりすることで救われるのではなく真理を知ることで救われるという考え方で、さらに、伝統的なキリスト教と大きく異なるのは、この世界が唯一絶対の神が創造したというのではなく、全能でもなければ全知の神でもない、劣等な神がこの世を創造したとし、この世界から逃れる方法を学んだ人が救済されるのだという考えです。そうしたことから、イエスを官憲に引き渡し、彼を死に追いやったことで解放したとするユダは英雄扱いされていることから、『ユダの福音書』はグノーシス主義のものが書いたとされています。他にもこの宗派が書いたとされる様々な書も挙げて共通点などを挙げています。

以上のように、それぞれの専門家によってユダの福音書が描かれています。私にはこの世界観は哲学的でかなり難しく思いましたが、今世界中に広がっているキリスト教にはもともと様々な解釈があったことは初めて知りました。本書では古代ガラスはほとんど出てきませんが、エジプトでユダの福音書が発見された時、ローマ時代のガラスも見つかっていることをお伝えしておきます。どんなガラスだったのでしょうねえ・・ 

vitrum labook

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2011.01.08 23:28 | , 考古学

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