Blog:羅馬は一日にして成らず -2nd edition-

奈良大学特別講演「古代のガラス研究15年」①2015.02.08

1月7日 奈良大学にて行った特別講演の内容です。
今回の内容は、研究発表というよりも、専門職に就かずに続けてきた研究というものに
焦点を当てた、学生さん向けのものです。

もっとも素朴な疑問として、なぜ専門職に就かなかったのか?と思われるかもしれませんが、
自分で作って研究するという方法を採ったために、当時は専門職に就きたくても就きたいと
思うところがなかった。国内にはガラス窯を持つ考古系の博物館なり専門職はないので。

実はガラスの専門学校の試験を受けたのですが、デッサンと粘土造形という、やったこともない
入試方法に歯が立たず、撃沈。とはいえ、そこはガラス工芸を学ぶところであって、考古学が
できるわけでもなかったので、落ちてよかったと思いなおしました。ちなみにデッサンは専門学校に
通うお金がなかったので、以下に出てくるカルチャーセンターで知り合った方にデッサンができる方が
いらっしゃって、講座の後に実家で教えていただき、ここを去った後はガラス作家の奥さんに教えて
いただいてました。とはいえあまりに時間がなく、さらに私が受けた入試から傾向が変わったというのもあって
その変化についていけず(笑)

では学生を卒業する時に、研究を辞めたのか?

というとそうではなく、全く関係のない仕事に就きながら研究を続けるという 方法を取りました。
それくらい研究が面白かったんです。それから早15年が経ちました。今でも続けられているという
奇跡。嫁には趣味呼ばわりされていますが(泣)、昔と違ってお金を頂けるような講演のお話を
できるようになりました。これは長年続けたものを持っている人しか分からない気持ちかもしれませんが、
続けるって本当に大変なことだということは自信を持って言えます。

そんなこんなで、今に至るまでの経緯をまじえて研究を発表したのがこの講演です。

学生時代

きっかけ

ガラスをテーマに選んだのは3回生の時。理由は単純で「誰もやってなさそうだから」。
私の専攻は保存科学だったので、出土したガラスをどう処理し、修復し、展示までもっていくか
の研究が最初のテーマでした。

そこで、N先生に参考文献がないか相談したところ、手渡された本がコレ。

『Conservation of Glass』

「ガラスの保存科学」という英語の本(中身の紹介は書名をクリックして下さい)。
ともかく、これを翻訳することになりました。

ただ、これだけでは翻訳をまとめただけの卒論になってしまうと思い、保存や修復するにも
製作技法を知っておいた方がいいなと考えて、自分で作ることを思いつきました。これが
今も続く、自分で作って研究するスタイルの始まりです。

ガラス作家との出会い

自分で作ろうと考えたちょうどその時期、最寄駅で近所にクラフトパークというカルチャーセンターが
出来るというポスターを見て、「なんとタイムリーな」ということで応募。競争率7倍と聞きました。設立1年目
は大阪市民が優先されるということで、八尾市民だった私は、抽選で選ばれることはない・・・

はずだったんですが、運よく繰り上げ抽選で選ばれました!

講師はその曜日だけ京都から来られているというガラス作家のS氏。S氏は平日の午前から若い男が
なんでこんなカルチャーセンターに通っているのかと不思議に思っていたらしく(笑)、ある時、「ここで
何が学びたいのか」と聞かれ、私は「古代ガラスを復元してみたい」と答えたら、非常に興味を持っていただき、
カルチャーセンターではやることが決まっていてできないから、ということで京都のS氏の工房でやったらどうかと
誘っていただきました。

これがS氏との出会い。大学院卒業後の数年後までずっとお世話になることになります。

この京都の工房が周山というところにあり、JR京都駅からバスで片道1時間半….バス代も片道で1000円越えていました。
しかし、この距離も交通費も、自分で作って研究できるという好奇心には何の問題もなかった。

つづく

2015.02.08 22:33 | ブログ

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