2014年11月に行われた日本ガラス工芸学会大会の続き
④「ダイアモンドポイント彫刻の技術的発展に関する一考察」 武田 靖 (北海道大学)
ガラスに彫刻を施す技術の発展に関する発表。
紀元前15世紀にガラスに王銘を刻んだ例があり(トトメスⅢ世銘入りのコアガラス)、このようにガラスにカットを入れる技術が
発展して1556年、いよいよダイヤモンド・ポイントと呼ばれる、小さな小さな点描で構成される絵がガラスに描かれるようになるという。
この技術はオランダで特に発展し、フランス・グリーンウッド(1680-1761)ら点刻師が知られている。
彼の作品を写真で見たが、ガラスの透明性を活かして、モノクロ写真のようにみえる驚くべき作品でした。
なぜオランダで点刻が発展したのか。谷一氏によると1643年に銅版画に傷(点刻など)を付けてインクを刷り込み、
印刷するというメゾチント技法がオランダで開発され、それをガラスに応用したためだとしています(谷一2011 『世界の切子ガラス』
p.56)。
このダイヤモンド・ポイントによる作品は手作業により点刻の濃淡を微調整できるため、すばらしい作品になる一方、手作業であるがゆえに
時間とコストがかかってしまうため、大衆受けする作品ではなくなってしまい衰退してしまいますが、現在、「グラスリッツェン」と呼ばれる
芸術作品として残っています。
以下に、参考にした谷一文献と、トトメスⅢ世銘入りガラスの写真が掲載されている文献を紹介します。
日本ガラス工芸学会2014年度大会に関しての紹介はこれで最後です。
①「新沢千塚出土のガラス碗とガラス皿はどこから来たのか」 阿部 善也(東京理科大)