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『サピエンス日本上陸』3万年前の大航海 – Vitrum Lab.

Books:本の紹介

『サピエンス日本上陸』3万年前の大航海2020.03.17

『サピエンス日本上陸』3万年前の大航海

 

  • 海部陽介
  • 2020
  • 講談社
  • 335ページ
  1. プロジェクトの誕生
  2. 3万年前の謎
  3. 草たば舟
  4. 竹いかだ舟
  5. 丸木舟
  6. 黒潮を超える実験航海
  7. 台湾から与那国島へ
  8. 祖先たちはなぜ島を目指したのか

vitrum lab.評

『日本人はどこから来たのか?』で日本人のルーツの1つを「航海者」として捉え、
今の台湾(当時は中国大陸と陸続き)から渡ってきた人類にスポットを当てた研究者。
その後、実際に台湾から人力で黒潮を超え、沖縄の与那国島へ渡るという航海実験を
行ったことは話題になりました。

その実験の全貌をまとめたのが本書。
旧石器時代の舟は発見されてはいないですが、
海に浮かぶ島から黒曜石を採っていたといった間接的な証拠、
それも、漂流といった意図しない出来事ではなく、明らかに
意図して海へ出たという証拠は数多く存在します。
そういった証拠と、当時の道具で集め、加工できた材料、
水に適した構造、旧石器時代の後にくる縄文時代の発掘例や現代の民俗例を参考に、
安全面を考えて実験に支障のない最低限の現代的要素を加えて実験は行われました。

舟で台湾から与那国島へ渡る大きな障害は黒潮。台湾と与那国島の間にある海を渡る最短ルートを
出発地に選ぶのが当然と思われますが、黒潮は時速1メートル以上で南方から北方へ流れる幅の広い流れで、
これに人力が打ち勝つことができるのかと考えた時、おそらく北へ流されながら横断することになるだろう
ということで、台湾の南寄りの浜からスタートすると著者は考えました。

彼が舟の候補に挙げたのは3つ。草でつくった舟、竹でつくった舟、そして丸木舟。
航海実験もこの順で行われました。いずれも3万年前の技術レベルで作ることができたで
あろうという材料です。多くの専門家との共同作業で始められた実験でしたが、失敗の連続。
失敗の原因は本書で分析されていますが、まさにイメージと現実との違いを見せつけられるところが
実験考古学の醍醐味です。最終的には台湾から与那国島への渡航は成功しますが、
当時なかった地図、海流図、天気予報、食糧、など現代的要素を入れざるを得なかったことなど
は仕方がないとはいえ納得できていない著者の気持ちは大いに共感できることがありました。

海や舟に詳しい専門チームで成し遂げたプロジェクトの失敗と成功は読んでいて
とても面白かったです。このチームの中で実験考古学的な視点を持っている著者は
ところどころで、本音を漏らします。例えば、舟の乗組員が地図をみて渡航計画を
立てていた時、当時地図はなかったので、なるべく見ないで欲しかった・・など。
この気持ちは古代ガラスの実験でも同じ気持ちになったので大いに共感できました。
ガラス作家に質問をした時に、これはこのようして作る、これを使えば成形しやすい・・
など。そして私は「先生、でも当時この道具はなかったんです」と言い、振り出しに戻る
といったことがありました。著者は最後に、実験の総括として台湾のスタート地点をもっと
北寄りにしてもいいのではないかと考え始めます。今後、新たなプロジェクトが立ち上がるの
かは分かりませんが、まだまだ目が離せません。

vitrum labook

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2020.03.17 08:27 | 実験考古学,

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