コロナの影響でイベント自粛ムードですが
東京・恵比寿でエジプト考古学・ファイアンス研究者である山花氏のファイアンス体験ワークショップに参加させていただきました。開催が危ぶまれていると思ったのは自分だけだったみたいで、普通に開催され、頻繁に上京できないのでありがたかったですが、もちろんマスクなど花粉症対策もかねてしていきました。
発症していなくても万が一うつしてはいけませんからね。
ファイアンスに触れたのは初めてですが、ガラス史の研究上、よくファイアンスが登場するので知ってはいました。私がガラスを研究し始めた20年ほど前は、ファイアンスのことはほとんど分かっていませんでしたが、今回、ここまで分かってきたのかとびっくりでした。せっかくの体験を忘れないうちにまとめます。内容は一応メモから起こしていますが、自分で調べたりしたことも断りなく盛り込んでいるため、山花氏の発表の内容をそのまま反映しているような内容ではないことを予めご了承ください。
聞きなれない「ファイアンス」とは?それもそのはず、この技法は現代ではすでに廃れてしまっていて、わずかにその親戚らしき技法がトルコやイランに見られるのみとなっています。焼物とガラスの中間物質とされており、原材料はガラスとほとんど同じですが、これらを練って成形し、窯で焼いてつくります。
用途として器、象嵌、立体造形物などがあります。
写真のように、ほとんどは青い色をしており、これは原材料に含まれる銅による発色です。
この図録の表紙に掲載されているカバのファイアンスは特に有名です。
原料
ファイアンスの主原料はざっくりと
二酸化ケイ素 80数%
酸化カルシウム 5%
酸化ナトリウム 4-6%
酸化銅 1%
その他
という構成で、ガラスとほとんど同じで分量が違うだけ。
ガラスの前段階物質と呼ばれる所以です。
このように科学分析によって化学組成は分かっているものの、
これらの成分がどのような状態にあるのかが分かっていないため
原料が追及できないということです(例えば酸化ナトリウムは炭酸ナトリウム
としても、炭酸水素ナトリウムとしても存在しているなど)。
今回のワークショップではこの原料のままでは成形が難しいということで、
可塑性を上げるために粘土(ベントナイト)や重曹を少し入れているということ
でした。それでもなお、可塑性の悪さは後で知ることになるのですが・・・。
二酸化ケイ素とは石英のことで、花崗岩が風化してできたもの。岩石の状態では
使えないのでこれを細かく砕き粉状にします。現代では機械的に細かく砕くことができますが、
当時は岩石を熱して割り、さらに石臼で挽いて細かくしていました。
酸化カルシウムは石灰岩(炭酸カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)などがあります。
ガラス原料にも二酸化ケイ素やカルシウムが使われますが、これは砂浜の砂を原料としたために、
そこには貝殻も入っているため、意図せずともカルシウム分が混入されたという考えもあります。
酸化ナトリウムには炭酸ナトリウムなどがあり、古代エジプトではミイラつくりに使用されて
いました(ナトロン)。
酸化銅は銅鉱石が使われました。シナイ半島の銅鉱石が有名です。
つづく