間があいてしまいましたが、2014年11月に行われた日本ガラス工芸学会大会の続き
私が発表したものです。
③「古代ガラス玉の製作技法に関する研究 -熔解ガラスから直接作る技法 」 島田 守
今取り組んでいる研究は、長年疑問に思っていたことなのですが、ガラス玉の技術から吹きガラスの技術に至る
流れを大まかに捉えた時、ひとつの軸上で考えられないかということです。
ガラス玉は現代のイメージからバーナーなどを使ってガラス棒を直接焼き切りながら作っているというイメージがあり、
要するに「直火」を利用します。 炎を立ち上げるために送風が必要なことと、あらかじめ準備したガラス棒が必要となります。
一方、吹きガラスは窯の中の熱で全体を加熱しながら部分的な成形を行うため「輻射熱」を利用します。成形時は窯から
ガラスを出して常温下で行います。送風は窯の中の温度を高温に保つために行われるのであって、ガラスを直接加熱するため
ではありません。必要なのは断熱力のある「窯」。
一方は直火、一方は輻射熱。同じ熱を利用するにしても、ガラスを成形するための形が両者で異なります。
直火でつくる方法は「Glass Beads 01」を参照。
ところが直火では残らない痕跡を有するガラス玉が存在します。
バルドー博物館(チュニジア)
フェニキア人頭玉と呼ばれるガラス玉の髪の毛やあご髭、耳など
窪みのある部位
由水 1989『トンボ玉』より
突起部分の窪み
などは直火で焼き切りながら作る方法では、あえて窪みを作らない限り、
残らない痕跡です。
そこで、焼き切らずにこうしたガラス玉を作る方法を実験したのが「Glass Beads 01」。
パーツはあらかじめガラス棒をスライスして作るとして、ここで問題になったのがそもそもの
下地をどのように芯に巻き付けたのかということでした。
熔けたガラスに棒を突っ込んで巻き取ったのでは、棒の先にガラスが巻き取られるので
穴が貫通した玉にならない。ここで参考になるのが
「トルコ、ギョレジェのガラス工房(Making glass beads in Görece, Turkey)」に掲載した
最後の動画。
ガラス液面を少し立ち上げておいて、その下に棒をくぐらせて巻き取ると、棒の途中の部分で
巻き取ることができるため貫通した穴の玉ができる。さらにここで作られている魚型ガラスの
目のように、棒でさして付けることで窪みが残る。
このように熔解ガラスから直接つくる痕跡が、上の写真の窪みと似ています。
液面からガラスが立ち上がるということは、窯の温度が低いからですが、
このような技法がやがて吹きガラスへと発展していくのではないかと
考えています。
本研究では液体ガラスから直接ガラス玉を作る可能性を探っていますが、
もちろん、ガラス玉を作る方法は一つではないと思われます。型を使ったり
ひっぱったり。これは現在でも同じです。
しかし液体ガラスの存在は窯の存在を示唆し、そこから吹きガラスへとつながる
道が開けたという大まかな道筋が考えられるのではないか、と思えるのです。
これは古代のバーナーを追いかけていては見えなかった視点であり、興味深いテーマで
あります。